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2003.11 「第38回セントラル硝子国際建築設計競技」に設計本部新人が入賞

~『新しい時代の図書館』に斬新な提案~

1966年より毎年開催され、次世代の建築デザインを担う若手デザイナーの登竜門として知られる“セントラル硝子国際建築設計競技”。第38回の今年は『新しい時代の図書館』を課題に実施され、当社設計本部の新人、米澤俊樹の「記憶の巡礼~墓地書斎群~」が、見事入賞作品に選ばれ、10月8日に表彰式が行われました。過去最多の応募総数1,062点(国内633点、国外429点)の中から、入賞12点という狭き門を、“墓地的書斎群としての図書館”という斬新な発想で突破した米澤のアイデアにご注目ください。

入賞発表は「新建築11月号」に掲載中。なお入賞作品は2004年1月27日~2月3日まで建築会館展示コーナー(東京都港区芝5-26-20)で展示される予定です。

記憶の巡礼~墓地書斎群~

IT技術の進歩、情報の多様化…。地域コミュニティーレベルでの情報の共有から、個人の身体の周辺へと情報は凝縮されていく。
他者と情報を共有する機会が増加する一方、その他者が匿名性を帯びてゆくのもまた事実である。
情報の盲目的氾濫状態。我々は情報を選択しているのか、それとも情報に選択されているのか…。

こうした時代において、図書館もまたその有り様を問われている。
図書館にメディアテークとしてのあり方が求められていくのなら、多種多様な情報を包括的に網羅するシステムに対し、場所性によって炙り出される特定の情報を提供するシステムが存在してもよいのではないだろうか。

本計画においては、墓地的書斎群としての図書館を提案する。その地に眠る死者の空間=墓地をひとつの情報集積体と捉え、生前に人々が蓄積した情報・記憶の一部を構成する個々の蔵書を納めた書斎としてとどめる。
生者は死者の記憶の集住体=墓地書斎群にアクセスし、分類コードによって整理された情報ではなく、その場所に眠る人々の個性によって特化された情報の海を巡礼する。
個人に家族墓、共同墓、個人墓等の多様な形態を有する書斎群に自らの蔵書をとどめ、情報の集合体としての図書館に豊かな起伏をもたらす。

死者が我々に残してゆく情報の集積体としての生きられた空間。
地域を支えてきた人々の記憶の一部がその土地固有の図書館を形成し、生者の空間から隔離された墓地は、都市の庭・日常空間・地域情報ネットワークの拠点として再生する。

人々は都市の様々な場所に散在する、その場所にしかない情報の海を巡礼し、その土地を、人々を読み解き、自らの生を、死を選択してゆくのかもしれない…。