TRAINING PROGRAM / STUDENT SQUARE

石工場見学

協力:株式会社ガイアテクノ三重工場

出口 亮(建築)
2006年入社



これまで見学してきた工場で生産される建材は、ある原料をいくつかの加工工程を経て生成されるものであるとするならば、今回見学した松下ガイアテクノ三重工場で生産される石材は、原料そのものを建材として活用するもので、石材の質が建材の良し悪しの大部分を決めるといっても過言ではないだろう。それは、「石は大地からの贈り物です。」とおっしゃっていた工場長の大滝さんの言葉からも伺える。

しかし石材の質の良し悪しだけで良い建材が作れるというわけではない、ということが見学の過程でわかってきた。それは石材にも様々な特性があり、それを理解した上での加工が重要になってくるということにある。

まずは、石材の物質的な特性について。この工場で扱われている石材を大きく分けると2つあり、1つは花崗岩(御影石)で、もう1つが大理石である。これらはそれぞれ生成過程が異なる。花崗岩はマグマが急冷・固結してできたもので、非常に硬質であり、また吸水性が低いため、外装材としても用いることができる。それに対し大理石は、既存の岩石に地殻変動などによる変成作用が加えられることでできたもので、花崗岩と比べるとやわらかく、吸水性をもつので、内装材として多用されている。余談ではあるが、例えばルイス・カーンのソーク生物学研究所での、海の水平線へと向かう中庭で用いられているトラバーチンのように、海外の建築作品をみると外装材として大理石を用いている事例がいくつか見られるが、その場合には、その土地の風土やメンテナンス方法などを考慮しなければならないだろう。

さて、このような石材の特性を理解したところで、加工の話である。この2種類の石材は、その硬さによって切断方法が大きく異なってくるのだ。比較的やわらかい大理石では、のこぎりを引くような線的な切断方法であり、対する硬質な花崗岩では、ノミで一点一点削っていくようなイメージの点的な切断方法である。特に花崗岩の切断に用いられるガングソーは、曲線を描くように反復運動させた金属片にダイヤモンドの粉末を撒くことで、石と金属片の間に粉末が入り込み、石を(金属片までも)点的に削っていくものであり、1つの花崗岩を切断する工程全体で数日もかかるということで、その加工の風景といい、工程といい非常にダイナミックであった。

またこの切断する際には、石の意匠的な特性を理解しておかなければならない。石材にも木材と同じように板目・柾目という、その生成過程から生み出された方向性を持った模様があるのだ。例えば大理石では、その模様の多様さから柾目(層に対して垂直方向)の面が多く用いられているそうだ。ここで私が大理石に関して興味を持ったのは3つ。

  1. 曲げ強度が大きく薄肉化できるので部材の軽量化が図れる
  2. 板目は柾目と比較すると切断面ごとに色や模様が大きく異なるということ。
  3. 板目のほうが柾目よりも一枚として大きな材をとりやすいということ。
もちろん大理石は、その模様の美しさが特徴の石材だと思われるが、その切り方によって、同じ石から意匠的に異なる石材をとることが可能だということが非常に興味深かった。

今回の見学で、最も自然に近い状態のものを建築に取り入れることができる、つまり均質的ではなく予期せぬ多様な表情をもったものと出会うことのできる可能性をもつ石材を、他の建材とは異なる独特の特性をもった建材として改めて捉えることができた。