TRAINING PROGRAM / STUDENT SQUARE

GRC工場見学

協力:旭ビルウォール株式会社協力工場 株式会社タムラ大利根工場

林 正史(建築)
2007年入社



今回、GRC工場を見学し、もっとも印象的だったことは、その製造過程の多くが人力による作業であるということです。いままでに他の製品の工場を見学し、その多くの工程は機械化され、作業効率を重視し、大量生産をいかにスムーズに行い、全国に発送するという過程で、建築の高効率化並びに社会経済の中での建築の在り様について考えることの多いものでした。

まず製品の説明として、GRC は1973 年頃、英国で開発が完了し、1975 年にはわが国に導入され、市場に登場したガラス繊維で補強されたコンクリートであること。
特徴としては、

  1. 曲げ強度が大きく薄肉化できるので部材の軽量化が図れる
  2. 自由な形状に成形でき造形性に優れる
  3. 不燃材料で内・外装材、柱・梁カバー、永久型枠、景観材料などの幅広い用途
などであることをお伺いし、石膏ボードのような製造工程を想像しました。しかし、実際に工場を見学させていただき、想像とは違い、大量生産ではなく、一つ一つ手作業により丁寧に作り上げていくという工程を見ることが出来ました。

今回の見学先である、旭ビルウォール株式会社では、外壁材・景観材(擬岩)・手摺り天井材・化粧パネル・モニュメント等々、非常に多岐にわたるGRC関連業務を行っており、繊維補強建材において、顧客のあらゆるニーズ、問題点解決に協力できる技術陣、支援体制を整えているとのこと。優れた造形性がデザインやテクスチャアの自由度を拡げ、設計のスタイルに合わせた造形が可能と謳われているように、細かな凹凸や、味のある塗装仕上まで、技術者の腕により製造されていることに驚きました。

工業化されつつある建材の製造と、建築が唯一無二のものであることによる両極感情を強く感じると共に、強い興味を抱きました。日本GRC工業会の資料によると、オーダー商品の製造は工業化が大変困難であるが、ヨーロッパのメーカー数社は、全自動コンピューターコントロールの吹付けロボットを開発し実用化している。イタリアのメーカーが開発した吹付け装置は完全に商業ベースで使用されており、ドイツのメーカーも同様な吹付け装置を開発している。スペインでは、プログラムにより操作するのではなく、CAD図面から直接動作をプログラム化する手法が開発されている。このように、生産の自動化に向けての新たなステップが踏み出されている、とのこと。高効率化が良質な製品に繋がるとは一概には言えないこと。コンピュータ化するための初期投資など、低コストにする過程での弊害など、様々なことを考えるよいきっかけでした。

今回のように製作過程の見学をしながら、その素材の特性をお伺い出来たことは、製品自体について自身の見地を深めるだけでなく、ものづくりの流れや製品自体を肌で感じることが出来たという点で非常に有意義な研修であったと感じています。