TRAINING PROGRAM / STUDENT SQUARE

石工場見学

協力:株式会社ガイアテクノ三重工場

小松 紗織(建築)
2008年入社



三重県の阿下喜にある松下ガイアテクノ三重工場は石の輸入と加工販売を行っている。驚くほどのどかな場所だったが、広大な敷地をもち、貿易港である名古屋と四日市から25キロ程度という環境のよい場所であった。

今回見せていただいた原石は、深成岩である(御影石)花崗岩、堆積岩であるライムストーン、変成岩である大理石の大きく3種類であった。

現在国内では御影石が少し採れるだけで、ほとんどが輸入材であるということは意外な気がしたが近年日本の建築では本当に多様な石を使っているのをみると納得がいく。

外来材は、中国や韓国、イタリアを中心としたヨーロッパのほかにトルコやスペイン、ポルトガルからも輸入するという。イタリアからは大理石、ヨーロッパ、アフリカ、インドからは主に御影石を輸入しているそうだ。現地の建物の光景が目に浮かぶ。

輸入されてきた石には採石の方法から板目と柾目の面ができる。
御影石は地層に平行な板目はつるつるしていて、垂直面である柾目ではざらざらした表面をしていることから判別できる。また、堅い柾目には切り出す際により密に発破用の穴があることからも判別できる。(写真A)
日本では割れにくい柾目を使うことが多いらしいが、中にはオリエントピンクのように板目の方がきれいなものもある。また、変成岩のように地層が変質したとこで、板目や柾目の違いがなくなるものもある。(写真B)

ストックヤードに置いてあった豆腐のように柔らかいといわれる大理石は、グレー、ピンク、グリーン、ブルーなど様々な色があり、断面は石英がきらきらと輝いている。一方、御影石は雲母の含有量が多く、黒々とした表情で重厚感が漂っている。

板挽の過程では、やわらかい大理石は線接触で、大きなダイヤモンドのついた刃をのこぎりのように前後して挽く。一方堅い御影石はブレードを回転させる点接触で挽くという。いずれも刃の厚み分の石が削れてしまうこと(歩損)を考慮しなければならないし、屑が飛び散らないように水をかけながら切り出していた。

研磨の過程は、ダイヤモンドを貼り付けた砥石で仕上げるが、その目の粗さから400番(1平方センチの粒の数)から5000番まであり、数字が高いほど仕上げ面がより滑らかになる。石を石で磨くなんて不思議な印象を受けたが、地球上で一番硬く減りが少ないといわれるダイヤモンドを使うことに納得した。(写真C)
表面加工には粗いほうからバーナー仕上げ、ウォータージェット、ジェットバーナー&ポリッシュ仕上げの三種類があり、仕上げられた面を比較すると同じ石とは思えなかった。
バーナー仕上げは1700度で熱し表面の石熱膨張率の差を利用して石を飛ばすことで表面に凹凸をつけるもので、石の表情がより鮮明にみえてくるが、表面が焼け発色が落ちることから、その上に水で摩擦して細かい屑を落としたウォータージェット仕上げとすることが多いらしい。
1700度の火焔で表面を焼きさらにブラシで表面を磨くとJ&P仕上げとなる。
この仕上げまですると石を形成する様々な粒の断面が整えられ、石の表情がよくわかる。そして自分の顔が映りこむくらいピカピカになった。

実際に建築物に使う際には、石のどの部分を使うか検討する柄合せを行うそうだ。
これは、例えば地層に対して垂直に切り出した柾目の石は一枚のスラブでも色味がかなり異なってくるので隣り合って置くのに注意が必要だからだそうだ。それゆえ加工する前に、使う石をマーキングし使う部分を詳細に指定しているものもみられた。また、色味が違うからこそ柄をシャッフルして使うことで大きな面のなかでの多様な表情をつけることや右肩上がりに柄を合せることもあるそうだ。

石の使い方は多様であって、研磨することで、原石本来とは全く異なった表情もみられ、どのような表情として石を使うのかを考えさせられた。
一般的にはJ&P仕上げで磨かれたものが好まれるということだが、ジェット仕上げの中にも質感としてよいものもあった。

建築物にどの石をどのような仕上げで使うかはこれからよく考えて使いたいと思った。


ストックヤード
写真A
写真B
写真C