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WORKS 2001

神内ファーム21プラントファクトリー

用途:植物生産工場
所在地:北海道樺戸郡
延床面積:8,828.46m2
地上:2階 / 塔屋:1階

建築設計主旨

神内ファーム21プラントファクトリーは、民間企業の経営する全く新しいタイプの農業施設で、国内最大級の植物生産工場です。北海道樺戸郡浦臼町に神内ファームが所有する600万m2の広大な敷地の一角にこの未来型農業施設は計画されました。
建物は温室棟と管理棟に分けられ、温室棟はフェンロー型と呼ばれるのこぎり屋根状のガラス温室から成り野菜を栽培します。管理棟は人工照明で野菜を栽培する人工光温室や施設全体をコントロールする栽培管理室で構成されています。管理棟はアースカラーのレンガタイルを外装材とし、温室棟のガラスとともに浦臼の大地に新しい景観をつくり出しています。
温室内はコンピュータによる環境制御システムにより、刻々と変化する室内環境に応じて、温湿度、CO2濃度、保温膜・遮光膜・換気窓の開閉がコントロールされ最適な生育環境を常につくり出しています。また、ロボットを利用した野菜の定植・収穫・搬送を行うなど最新の技術も導入しています。

構造設計主旨

浦臼は北海道の中でも有数の豪雪地帯です。冬の1.5mを超える積雪に対し、日照を最大限採り入れるという温室の機能を満足させ、かつ構造的に成り立たせるためにはどうしたらよいか?その答えを見つけるために、実物大モデルをつくり融雪の実験を行いました。実験データを基に行政と協議した結果、積雪荷重低減が認められ屋根面の構成部材を小さくすることができました。また、温室の構造躯体については、張弦梁を採用することで横架材の断面寸法を小さくし、温室内に落ちる影を最小限に抑える構造形式としました。

設備設計主旨

温室を24時間、年間を通じて機能させるためには、冬期の暖房はもちろんのこと、夏期に気温が30度近くになるため冷房も不可欠です。また、収穫した野菜を貯蔵するための冷蔵庫も通年使える必要があります。これら莫大なエネルギーコストをいかに抑えるかも、重要なポイントでした。極寒の地の冬の寒さで氷をつくり夏の冷房に利用することを考えました。建物の地下ピット内に巨大なコンクリート製の氷貯蔵槽をつくり、冬期に数cmずつ水を張り外気を取り入れ凍らせます。これを繰り返し、合計1000トンの氷を製造し夏まで貯蔵します。夏期にその氷を熱源とし温室内の冷房を行うのです(季間氷蓄熱空調システム(特許出願中))。このシステムにより、冷凍機で空調した場合に比べてランニングコストを約1/6に抑えることに成功しました。また、ラック状に4100個の製氷パン(240リットル)が積まれた氷室の中でも約1000トンの氷がつくられ、野菜貯蔵のための冷気に利用されています(アイスシェルター方式)。

担当

大成建設担当者
総括 野呂一幸
建築設計 塩津一興、宮崎伊佐央
構造設計 川田雅義、大畑克三
設備設計 鴫原新一、伊藤卓治、神山猛、坂本敏一

社外受賞

2004年 日本建築学会作品選集2004