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WORKS 2013

神戸低侵襲がん医療センター

用途:病院
所在地:兵庫県神戸市
延床面積:9,510m2
地上:5階

建築設計主旨

神戸低侵襲がん医療センターは、神戸市ポートアイランドの神戸医療産業都市に立地しています。
切らずに治す「低侵襲医療」に特化した最新の放射線治療機器3台を有するがん専門病院です。
がんに向き合う新しい病院として、患者さんとその家族ががんに向き合って安心して治療が受けられ、患者さんの自己治癒力を向上させ、誰もが笑顔になれるこころとからだにやさしい病院をコンセプトとしています。
外観は、周辺の公園の緑や街路樹との共生に配慮した木立をイメージした「木調ルーバー」、海のさざなみと水平線をイメージした「水平バルコニー」、親しみと安心感のある「神戸カラー」の3つの要素で構成し、環境に優しいあたたかみのある外観にまとめています。
建物の中央に「吹抜と光庭」を設置することで空間の目印をつくり、自分の居場所と目的地を認識しやすくしています。
この吹抜を中心に患者さんが利用する受付・診察室・検査室を配置することで、目的地に迷わずに移動できるウェイファインディングを実践した計画にしています。
放射線治療部門は、新しい試みとして閉鎖的な操作室をオープンカウンターにすることで、スタッフとのコミュニケーションを誘発し患者さんに安心感をもたらす工夫をしています。
また、治療室内は、間接照明や木目調の内装を施し、温かみのある空間づくりとしています。
屋上には、癒しの庭・くつろぎの庭・季節の庭などのテーマ性を持たせた草花を植え、アロマセラピーやリハビリ庭園として患者さんや家族・スタッフが楽しめる屋上庭園にしています。

構造設計主旨

広さを必要とする画像診断部門の効率的な配置計画や、将来の医療ニーズの変化による間仕切り壁位置の変更等にも柔軟に対応できるように、大成建設開発のC.S.Beam(端部RC、中央Sの複合構造梁)を採用し、15.3mスパンの広い空間を実現しています。
放射線治療部門は、放射線防護用のコンクリートの厚い壁で囲まれている為、本体建物とはエキスパンションジョイントで分離し建物の偏心を抑えるとともに、独立した壁式構造として計画することで鉄筋量の削減も考慮した合理的な設計としています。

設備設計主旨

阪神淡路大震災の経験を生かし、比較的復旧の早かった電気に着目し、オール電化の建物を計画しました。
空調設備は維持管理が容易な外気処理エアコン+空冷ビルマルチエアコン方式を基本とし、使用用途に応じたゾーニングを行っています。
放射線治療室等の主要諸室には個別のパッケージエアコンを採用し、夜間利用しない待合ホールには氷蓄熱パッケージエアコンを採用しています。
給湯設備は夜間貯湯式給湯システム(業務用エコキュート)を採用し、ランニングコストの低減、省エネルギー性に配慮しています。
受電方式は1回線高圧受電方式とし、災害などによる停電対策用としてディーゼル式非常用発電設備を設置し、約10時間の運転が可能な計画にしています。
また、防災負荷と非常用電源の必要な医療機器、空調、照明等の保安負荷への給電が可能な容量としています。
塩害対策として、屋外に設置する設備機器は耐塩害仕様の機器を採用しています。

インテリアデザイン主旨

案内の木
外来エリアでは、手漉き和紙や天然木など自然素材で創った「サイン」を挿入することで完成するデザインを試みました。
1階は「新緑のグリーン」、2階は「海のブルー」に染めた和紙をサインのベースとし、木調の空間の中で、サインだけに色を持たせることで、見つけやすくすると同時に、空間に彩りを与えています。
また、無垢の木で枝葉を広げるような矢印は、直感的に行く方向を分かりやすく示します。
海を臨む森の木立をイメージしたサイン「案内の木」による癒しのインテリアが、患者さんのストレスを少しでも和らげることを願っています。

医療行為の気配を消した病棟
病棟は、神戸北野の洋館を思わせる居心地のよい空間デザインとしました。 医療ガス等の設備を隠したメディカルコンソールや、名前を隠せるナースコール組込み型病室サインなど、細部までディテールを追及することで、「医療行為の気配」を消し、入院の不安を和らげる配慮をしています。

担当

大成建設担当者
建築設計 岡本憲文、倉石敏子、中山恵美子、阪本由美子
構造設計 中川路勇、島村高平、中島和華子、菅野貴孔
設備設計 井上邦彦、吉田典彦、川島尚子
電気設計 星野顕、松村保彦
インテリア 高橋洋介、吉田美香

社外受賞

2013年 第15回 兵庫県人間サイズのまちづくり奨励賞