HOME > WORKS2015 > 品川シーズンテラス

WORKS 2015

品川シーズンテラス

撮影:エスエス東京
用途:事務所、店舗、集会場、駐車場、下水道施設
所在地:東京都港区
延床面積:206,025.07m2
地下:1階/地上:32階

建築設計主旨

本計画は、東京都下水道局が所有する芝浦水再生センター敷地内で、地下に下水道施設を整備し、その上部に業務・商業系ビルを建設する、前例のない開発手法によって「環境配慮型オフィスビル」を実現した官民連携プロジェクトです。
都市に立地する持続可能な環境モデルビルとは、高い環境性能を持ちながらも、一般的な環境技術の集積でなく、立地環境をとらえ、固有の解を導き出すことがふさわしいと考えました。
羽田空港の航空法の制限線により、南側に遮るものがなく屋根面に降り注ぐ「光」。
品川駅東側の明治初期からの埋立地がかたちづくる運河が、海から敷地を経由し都心に運ぶ清涼な「風」。
水野循環の最終地であるセンターが再生する「水」。
都市構造がつくる得意な自然環境を建築に昇華させています。
建築中央を貫く高さ130mの吹抜け「スカイボイド」は、太陽光採光システム(T-Soleil)を備え、光をエントランスと基準階コアに届け、給気ルートとして風を取り込みます。
縦基調構成のタワーは、庇と縦フィンにより光と風をコントロールし陰影のある豊かな表情を持ち、頂部は吸排気の風を妨げないように風邪が抜ける軽快なフィン形状としています。
インテリアとランドスケープには、東京音水源地である多摩産のスギなどを使用し、水を育む森を感じさせています。
立地環境を活かした多様な環境技術を建築的に統合・デザインすることで、最高水準の環境性能と快適性を両立しています。
ワンフロア最大約4,970m2の貸室面積の事務所は、眺望のよい外周をすべて専有部としています。
整形で開放的な空間と充実したアメニティにより、テナントニーズにこたえる柔軟なワークプレイスが実現できます。
スマート時代のエコロジカル・インフラの一翼を担うだけでなく、新たな国際ビジネスの拠点にふさわしい先進的なオフィスビルを実現しています。

構造設計主旨

建物は、超高層のタワーと低層のアネックスをアトリウムで接続させる構造としています。
免震構造を採用したタワーと耐震構造のアネックスは、それぞれ合理的な計画とするために独立した構造としています。
両棟の接続部分であるアトリウム屋根は、アネックスから延ばした屋根構造をタワー4階の梁で支持させる構造計画としており、両棟の地震による水平力伝達は、タワー側の屋根荷重を支持する部分に転がり支承を設置することで軽減され、構造上は分離されながらも、建築的には一体感を感じさせる計画としています。
タワーの耐震計画は、建物のコア部分にバランス良く配置したシェイプアップブレースと免震構造の採用により、上部ビルの地震時応答性状を向上させ、地下の下水道処理施設への負担を軽減させています。
また、タワーの床組計画は、床の振動性状を確認しながら梁断面と梁配置を決めており、床振動に関する要求性能を実現しています。
地下部分の下水道施設は土木構造物となるため、建築と土木の両方の規基準を満足させ、下水道施設の使用上考慮される荷重変動にも対応できる構造としています。

設備設計主旨

自然エネルギー(大風量外気冷房システム、太陽光発電、太陽光採光システムなど)の活用で、環境負荷軽減と快適な室内環境を両立しています。
タワー中央に設けられたスカイボイドからは自然光とさわやかな風が取り込まれ、明るい共用部と快適な室内環境を生み出します。
涼しい外気を取り込むナイトパージや、下水熱エネルギーを利用した効率的な空調設備により、快適性と省エネルギー性能の両立を実現し、CO2排出量を効果的に削減します。
さらに、建物・エネルギー管理システム(BEMS)の活用により、CO2排出量やエネルギー使用量などを管理できる仕組みを整え、国内最高水準の環境性能を継続的に維持します。このような取り組みにより、建物の環境性能評価であるCASBEE2014のSクラスの認証取得、および東京都の建築物環境計画書制度のほぼすべての評価項目で最高段階を達成しています。
また、災害対策として防災・重要負荷だけでなく一部の搬送・電灯・動力を機能別にプライオリティーを設定し、発電機二次側の負荷状態により投入許可する保安負荷を段階的に自動制御する発電機負荷配分システムの構築等により、オフィス就業者の72時間BCP対応だけでなく、帰宅困難者の受け入れにも配慮したビルを実現しています。

ランドスケープ設計主旨

芝浦水再生センターは、JR品川駅と新駅の間に位置する20haに及ぶ敷地を有し、沿岸部と都心市街地とを結ぶ貴重な立地に位置しています。
本整備は、長期的・段階的再構築の第一歩であり、最終的にはこの水再生センターに広大な緑地が創出される予定です。
都市計画として建築形態を規定し創出されるこの緑は、沿岸からの風を冷やし都心へと涼風を提供する風の森となり、臨海部の沿岸生態系と武蔵野台地の樹林生態系をつなぎ、再生された水を活用する資源循環を形成する新しいかたちの社会基盤となります。
一方、この公共空間は、地域間にまたがる住民コミュニティの新たな拠点となり、新駅による将来の人の流れを促す都市のプロムナードを有し、壮大な都市のビスタを形成します。
地域に豊かな人と生態系を育み、風を導き、物質を再生し循環させる、都市の新たなエコロジカルなインフラストラクチャ―へと成熟していきます。

担当

担当
設計 株式会社NTTファシリティーズ
大成建設株式会社一級建築士事務所
NTT都市開発株式会社一級建築士事務所
日本水工設計株式会社
監理 株式会社NTTファシリティーズ
日本水工設計株式会社
商業エリア共用部デザイン・アート 株式会社乃村工藝社
照明計画 LIGHTDESIGN INC.
サイン計画 株式会社GKデザイン総研広島
大成建設担当者
建築設計 井深誠、峰村雄一、藤本鉄平、佐々木康成、坪沼一希
構造設計 小田切智明、網干眞一、大畑克三、岩井昭夫、高瀬恵美
設備設計 高木健、豊原範之、久保田宗人、山下盛久、上田泰史
電気設計 高木健、豊原範之、岡本隆、遠藤晃
ランドスケープ 蕪木伸一、山下剛史、藤澤亜子、神田祐樹
太陽光採光システム(T-Soleil) 横井睦己、大木泰裕

社外受賞

2023年 第3回 グリーンインフラ大賞 国土交通大臣賞
2015年 第31回 都市公園コンクール 設計部門 一般社団法人日本公園緑地協会会長賞
2015年 SDA賞 空間・環境表現サイン部門 入選
2015年 ウッドデザイン賞2015 ハートフルデザイン部門 木製品分野 入賞
2016年 第2回 ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞) 最優秀レジリエンス賞(エネルギー)
2017年 第17回 電気設備学会賞 技術部門 施設賞