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WORKS 2016

祇園末吉町ビル

用途:飲食店
所在地:京都府京都市東山区
延床面積:1,182.22m2
地下:1階/地上:4階

建築設計主旨

本計画は、既存ビルの東隣接敷地を購入して増築を行い1階のみ店舗をつなげ、その他の階はテナントビルとして整理するものです。
敷地は、歴史遺産型美観地区、旧市街地型美観地区に指定されています。
敷地の北側は、風光明媚な白川に面しており、頻繁に映画撮影に使われるなど京都でも有数の伝統的建造物保存地区です。
一方敷地の南側は、すだれを使った昔ながらの町家風飲食ビルが建ち並ぶ地域で、両極端の表情を持ち合わせていることがこの敷地の特徴です。
既存ビルは、独自の飲食ビルとしてのファサードを持っており、周囲の街並みに溶け込んでいなかったため、今回の計画で庇や屋根の軒の出を隣接町家と揃えると共に、増築部にすだれを利用することで全く表情の違う既存部と一体的なファサードを創出しています。
また、「伝統を現代につなげていく手法」として、耐久性のある素材であるステンレスをすだれに採用することで、新たな町家の風景を創出し、周辺街並みに溶け込む建築を目指しました。 夜の飲食街であることから照明デザインが重要と考え、LEDの向きをほんの少し(約1度)調整したことで光のすだれが表出し神秘的な表情を見せています。
インテリアには、水の「ながれ」をイメージしたガラスやデザインを随所に散りばめることで北側の白川を想起させると共に、内庭にも滝を配置しています。
水の流れる高さ7mの壁は、両サイドをステンレス鏡面とすることで広がりのある内庭となっています。

構造設計主旨

既存建物に並んでエキスパンション接続となる増築の計画です。
既存部と増築部とは1階のみ接続となり、一部既存耐震壁に開口を設けますが、その場合でも壁量が十分で耐震性に問題が無いことを確認しています。
既存ビルの法的なクリアーのため、行政との折衝を重ね、アンカーの見直し、一部床の補強等、天井をはがした上での調査・改修を経て、一体の建物として実現しています。
増築部も既存と同様、間口1スパンの構造ですが、狭隘な敷地も考慮して鉄骨造純ラーメン架構としています。
ファサードのステンレス製すだれは、祇園の町並みとの調和を考慮し、下地の存在感を無くすよう工夫しています。
増築側基礎は、直接基礎である既存側と基礎底レベルを合わせたべた基礎としています。

設備設計主旨

内装計画に合わせた照明計画としてグレアレスな視環境空間としています。
外装へのライトアップは通りの街明かりと調和した電球色(2700K)とし夜の演出を計っています。
ステンレス製すだれの照明については、配光の違う器具及び拡散型のフィルター等の実験を重ね、ある角度・位置からすだれに照射することで、京都の伝統的な「犬矢来(いぬやらい)」の形態を光の帯として表出させることに成功しました。
この光の「あや」がすだれの中に「光のすだれ」を実現させ、現代に昇華されたデザインを街並みに発信しています。
また、祇園の中心地という立地上、店舗有効面積をできるだけ確保できるように、既存棟と新築棟とを一体とした合理的な設備計画としています。
既存部地下には、受水槽と給水ポンプが設置されていましたが、水道局と協議を重ね新たに4階まで直結直圧給水方式に改修し、有効なバックスペースを確保しています。

担当

大成建設担当者
建築設計 平井浩之
構造設計 山﨑英一、笹井弘雄、杉山雄亮
設備設計 西村英俊、宮本敬介
電気設計 西村英俊

Technology & Solution:祇園末吉町ビル