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WORKS 2016

京都鉄道博物館

用途:博物館
所在地:京都府京都市下京区
延床面積:19,201.87m2
地上:3階

建築設計主旨

当施設は、地域活性化の取組みが進む京都駅西部の梅小路公園西端に位置しています。
敷地内の梅小路機関車庫(1914年建設)および京都市有形文化財である旧二条駅舎(1904年建設)を保存活用しながら、「地域と歩む鉄道文化拠点」という基本コンセプトのもと、総合鉄道博物館に拡張整備したものです。
新博物館は、梅小路機関車庫周囲に連続的かつ機能ごとに分棟配置し、既存エリアへは歩行者デッキで繋ぐことで、来館者が敷地全体を自由に行き交い、蒸気機関車から新幹線まで各時代を代表する計53両の車両や各種展示、蒸気機関車の整備の様子などを一体的に見学することができます。
施設の中心となる本館では、平面的な回遊動線に加え、立体的な回遊性を生み施設として一体的な空間とするため、自然光が差込む明るい吹抜を中心とする大空間の天井を斜めに折り上げ、3層にわたって連続する空間としています。
この3階には0系新幹線と同じ大きさの窓を設け、車窓より展示空間を見下ろす休憩スペースとし、下階の展示空間に動きを生みだすとともに、上階へ誘引する仕掛けとしています。
また、スカイテラスからは、東山の山並み、東寺の五重塔や京都タワーなど京都の町並みを借景に、新幹線から在来線や貨物線まで実際に運行している列車を間近に望むことができ、この施設の大きな特徴となっています。
テラスのウッドデッキのレベルをあげ、緩衝帯として緑地帯を設けることにより、手すりなどの障害物なく行き交う列車を見ることができる開放性と来館者の安全性を両立させています。

構造設計主旨

メインの本館は、車両展示に配慮し吹抜けや大スパンの無柱空間としています。
小梁を格子状に配置し、たわみや振動を抑える工夫をしています。
外周部や諸室の境界にブレースを配置し、地震水平力を負担させています。
トワイライトプラザは軽量の金属屋根で外壁が無く、駅舎のプラットフォーム上屋をイメージしており、シンプルな鉄骨造純ラーメンです。
スパン方向のトラス架構は旧駅舎からの移設であり、仕上材として再利用している他、H鋼柱にはリベット状の仕上げを施し、駅舎に多い組柱を模しています。
不特定多数の人で賑わう施設のため、天井の耐震化も図っています。
本館1階の展示室は特定天井であり、T-Ceiling V-Brace工法を採用しています。
吹抜け上部の屋根天井は勾配や段差がある複雑な形状のため、準構造下地に取り付けています。

本建設地には埋蔵文化財の保護層(設計GL-約1.7m以深)が定められており、保護層より浅い部分を地盤改良した直接基礎で計画しています。

設備設計主旨

省エネルギー性、快適性及び安全な空間提供を目標に計画しました。
外調機のCO2風量制御、夜間の冷涼な空気を躯体に冷蓄熱を行うナイトパージ制御などを採用しています。
特別収蔵庫は、歴史的価値がある収容物を保管するため、収蔵庫の壁面、床面、天井面の全ての6面を2重空間とし、2重空間内を空調する間接空調方式を採用し温湿度の変化を抑えています。
自然エネルギーの有効利用としてトイレ洗浄水にて雨水利用、70kwの太陽光発電設備及びエントランス棟正面にソーラー灯を配置し環境配慮を来訪者へアピールしています。
LEDダウンライトを主体とした照明計画は省エネルギーとともに展示物の演出にも配慮しています。
一方、安全性として、主要な場所の画像監視や入退室管理は勿論のこと、既存円形車庫との防災監視の連携など行っています。
放送設備の自動メッセージでは日英中韓の4カ国語として海外からの来客者にも配慮しています。

担当

担当
基本設計・実施設計監修 ジェイアール西日本コンサルタンツ・東畑建築事務所設計共同体
実施設計 大成建設株式会社関西支店
展示設計 乃村工藝社
大成建設担当者
建築設計 平井浩之、笹井敦史、高橋秀秋、山下圭三
構造設計 山崎英一、板矢崇志、杉山雄亮
設備設計 鈴木真人、宮本敬介
電気設計 西村英俊、根本昌徳

社外受賞

2016年 2016年度 鉄道建築協会賞 特別賞
2016年 第35回 ディスプレイ産業賞 ディスプレイ産業 優秀賞(経済産業賞商務情報政策局長賞)
2016年 第15回 日本鉄道賞 大賞(受賞者:西日本旅客鉄道株式会社)
2016年 第50回 SDA賞 公共サイン部門 入選(受賞者:株式会社乃村工藝社)
2016年 DSA日本空間デザイン賞 入選(受賞者:株式会社乃村工藝社)
2020年 第17回 公共建築賞 地域特別賞