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WORKS 2018

新宿みやざき館KONNE

用途:物販店舗、飲食店
所在地:東京都渋谷区
延床面積:289.88m2
地上:2階

建築設計主旨

「ひなた」を伝えるアンテナショップ
新宿みやざき館KONNE(以下、みやざき館)は、宮崎県のアンテナショップと観光PRの場です。
都心に住む宮崎県民の心の拠り所として、1998年に新宿サザンテラスにオープンしました。
小田急線の上部に構築された人工地盤上の店舗は、新宿駅南口に人々の流れを生み、さらに「バスタ新宿」の完成により駅からの動線に大きな変化をもたらしました。
各地方のアンテナショップは1990年代前半から登場し、都内には銀座・日本橋地区を中心に約32店舗が存在します。みやざき館もアンテナショップの先駆けとしてこの地に誕生し、オープン20周年の節目に建物の外観を残してリニューアルしました。
2階建ての店舗は、1階に特産品や焼酎などを販売する物販エリア、2階にレストランを計画しています。
上下階は、運営及び営業時間が異なり、店舗の中央を通り抜ける従来の出入口では管理上問題が生じることから、出入口の位置を変更しました。

「木材」の可能性を追求
宮崎県は、全国トップクラスの日照時間と日本一の杉生産量を誇る観光資源の豊かな県です。
ここでは、県が掲げるコンセプト「日本のひなた」をテーマにデザインしました。
店内に林立する杉は、飫肥杉(おびすぎ)と呼ばれる県産杉を地元の材木工場で加工し用いています。
油分が多く、弾力性のある特徴から造船材や建築材料として使われてきた飫肥杉は、宮崎の温暖な気候のもとで早く育ちます。
しかし、一方で木が柔らかく、反りやすい点から強度を保つのが難しいです。
本計画では、反りや曲げによる割れを考慮して集成材を採用し、内装材に活用することで外気や雨による汚れを回避しています。
ルーバーの形状は、アイレベルに合わせた「視認性の検証」と太陽の角度と方位による時間ごとの「日射の検証」から、ロールスクリーンを使わずに視線と日射をコントロールしました。
外部から商品が見えること、直射光を遮ることを考慮して、ルーバーの厚みを45mm、ピッチを194mmとし、端部で強度を保ちました。
アイレベルは、ルーバーの奥行を90mmとし、2階では隣接する建物の壁面緑化を借景に望めるようにしました。
また、足元は覗き込みを防止するためにルーバーの奥行を300mmとしています。
同様に、1階天井辺りのルーバーも300mmとすることで、開店時に直射光が商品に当たらないように制御しました。
このように「見せること」・「見せないこと」・「遮ること」をルーバーの形状で解決し、機能的なファサードを実現しました。
また、店舗の表層だけでなく什器も一から見直し飫肥杉にこだわり設計しました。
計画段階で商品を並べるトレイからプライスカードの製作までデザインすることで、限られたスペースで少しでも多くの商品を分かりやすく配置することを心掛けました。
トレイは深さに角度をつけて手前を浅くすることで、商品の見やすさ・取り出しやすさを重視しています。
人と人が「ひなた」でつながる、あたたかい店舗を目指しました。

設備設計主旨

シミュレーションによる視線・日射の検証
検証では模型を使い、夏至の太陽高度に合わせた時間ごとの経過を測定しました。
実際に光を当てると、開店時(9時)は什器下段に日射が当たり、開店時間(10時)になると什器に当たらないことが確認できました。
さらに、店内の様子は外からの見え方によって異なった表情をつくりだします。
「ひなた」によって照らされ、奥行きを感じさせる視覚効果を生み出しました。
このように、独創的なR形状の杉ルーバーによって周辺環境に馴染む建築を目指しました。

照明計画
「ひなた」をイメージした照明は、ランダムな大きさ・配置としています。
大きさは、直径100mm、125mm、150mm、250mmの4パターンのダウンライトを組合せました。
また、色温度も3000Kで温かい色合いとし、ひなたを体感するデザインとしました。
商品を照らす最も大きな照明は、各什器の真下にくるように配置しています。
さらに、什器トレイやサインにも照明を組み込んでおり、柔らかな光が空間を優しく包み込んでくれます。

担当

大成建設担当者
建築設計 高島謙一、土井健史、藪由香
構造設計 新田隆雄、小林治男
設備設計 竹内伸介、山下盛久
電気設計 竹内伸介、金子一登

社外受賞

2019年 ウッドデザイン賞2019 ライフスタイル部門 入賞