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WORKS 2018

市立吹田市民病院

用途:病院
所在地:大阪府吹田市
延床面積:46,239.92m2
地上:9階/塔屋:1階

建築設計主旨

計画地は、JR岸辺駅北側の吹田操車場跡地を利用して「健康・医療」をコンセプトとした再開発計画が進められているエリア「健都(北大阪健康医療都市)」に位置しています。
市民病院の基本理念である『市民とともに心ある医療を』を実現するために、次の5つのコンセプトを整備方針として建物をまとめています。
1.快適で利用しやすい環境づくり
2.環境負荷を抑えた施設(CASBEE・Sランク認証取得。病院では全国で7番目)
3.変化に対応する柔軟性をもった施設
4.ライフサイクルコストの適正化
5.防災拠点としての安全性・耐震性の確保
外観は、「水平性の強調」(バルコニーが織りなす水平基調の伸びやかなデザイン)、「緑の積層」(大らかな建築に彩りを添える軒先緑化の積層がつくる、リズムのある楽しげなデザイン)「土の記憶」(地元で出土した土師器をイメージした自然の色むらのあるせっ器質タイルをまとった温かみのあるデザイン)の3つのデザインコンセプトをもとに形作っています。
内部では、「快適で利用しやすい環境づくり」を実現するために様々な工夫を行っています。
外来部門では、患者が院内で迷うことなく目的地まで容易にアプローチできるようわかりやすさに配慮した「ウェイファインディング・プラン」を提案しました。1階の2層吹抜けのエントランスホールに面して、2階外来フロアを横断するメインモールを配置し、幅が広く外光の入る明るい空間として、患者が病院内のどこにいるかを認識しやすいようにすることで、患者の負担を減らしています。
病棟では、まず患者の症状に合わせて治療・療養できる空間として、多数の病室タイプを設けています。
また、入院患者が快適な療養環境で過ごせるように、床から天井までの大きな開口を設け、遠方の風景や身近な軒先緑化を病室やデイルームに取り入れ、ストレスを低減させる開放感のある空間を創造しています。
さらに、廊下の両端を開口とすることで、圧迫感をなくし、外光を取り入れることで災害時の避難安全性も向上させています。
また、リハビリ室やプレイルームなど患者の治療空間に近接して屋上庭園を計画し、自然のもつ癒しの効果で治癒に寄与できるように考えました。
外構では、南側の「緑の遊歩道」と連続して敷地境界沿いに歩道空間と緑地帯を設け緑のネットワークを形成し、市民の健康促進やリハビリ等に寄与する緑の回遊空間を創出しています。その中に緑に囲まれた滞留空間である「まちかど広場」を点在させています。「まちかど広場」の形状を楕円状とし、歩行空間と角度を持たせて配置することで、歩行者との距離や視線が気にならない、居心地よい外部空間を提供しています。
院内各所のサインには、健康のバロメーターである様々な測定値をイメージした「目盛り」をデザイン要素に取り入れ、その中に色々な記録を「トリビア」として記載しています。
病院という機能的な空間の中で、診察待ちの患者や来院した子供たちに快適に過ごしてもらうために、遊び心でこころを癒し、自身の体に関心を持ってもらえるような「しかけ」を院内に展開しています。

構造設計主旨

防災拠点として、災害時において医療機能を継続できるように高性能基礎免震構造(ハイブリッドTASS免震+オイルダンパー)を提案しました。
このシステムを採用することで、建築基準法の規定を上回る規模の地震動:大阪府域内陸直下型地震(上町断層帯地震)に対しても耐震安全性を実現しています。
また、患者の居住性や、将来の変化にも柔軟に対応できるように、約9.5mのロングスパンで内部を乾式間仕切壁とした純ラーメン構造としています。
乾式間仕切壁は、撤去が容易で耐震壁による制約がないため、将来のプラン変更に対してフレキシビリティが高い構造架構を実現しています。
建物の外観の特徴となる水平ラインを強調したバルコニーは、PC化により施工精度を高め品質を向上させています。

設備設計主旨

地域の中核を担う病院として、環境負荷の低減、災害時の病院機能を維持できる設備システムとしています。
具体的には、自然エネルギーの積極的利用による環境負荷の低減、免震ピットを利用したクール・ヒート・トレンチによる地中熱の有効利用や、地下水の多段階活用(外調機の外気の予冷予熱、雑用水源)、太陽電池パネルの設置、空冷ヒートポンプチラーや空調屋外機(EHP、GHP)への雑用水散水などを採用してCASBEE・Sランク認証を取得しました。
災害時についても医療機能を継続するため、72時間インフラを維持できる計画としています。具体的には、雑用水は地下水を利用、緊急排水槽を設置、発電機燃料を備蓄するとともに、耐震評価認定を取得した中圧ガスを採用する等のインフラ途絶対策を行なっています。
また、電力を最大限確保するため、マイクロコジェネレーションを排熱利用効率からもとめられる最大数設置しています。
さらに、「T-BC Controller(災害時のインフラの残運転時間の見える化・制御システム)」を導入し、災害時の円滑な運用をサポートしています。

担当

担当
基本設計・実施設計監修・監理 株式会社日建設計
実施設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
大成建設担当者
総括 松村正人
建築設計 岡本憲文、日置敏雄、倉石敏子、杉山貴則、坂口秋一、小杉知弘、峰岸和弘、藤瀬周一、笠井志保
構造設計 中川路勇、池間典一、藤野宏道、御所園武
設備設計 龍英夫、矢後佐和子、夏見洋平
電気設計 堀雄二、宮嶋禎朗、松村保彦、箭内伸司、陳剛

社外受賞

2020年 令和元年度 おおさか環境にやさしい建築賞 商業施設その他部門賞