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WORKS 2018

テージーケ―韮崎工場 / PROLK

用途:精密機械工場
所在地:山梨県韮崎市
延床面積:9,373.95m2
地上:4階

建築設計主旨

山を登るように巡る工場
地方都市である韮崎における精密機械工場の新築計画です。計画地は、甲府盆地の北西に位置しており、周囲は富士山・南アルプス・八ヶ岳・茅ヶ岳の4つの雄大な山々に囲まれていて、その途切れない稜線が「地域のアイデンティティ」となっていました。
クライアントは、豊かな自然に囲まれたこの土地において、製造空間として「安定したクリーン空間」と、企業の技術力をアピールする発信拠点として「豊かな自然へ広がる空間」を両立したいと考えていました。
元来、工場はその生産能力を最大化するという「製造の合理性」により建物が構成されてきました。そのため、工場の生産エリアと厚生エリアは機能上の違いから、エリアを「並列」させることが一般的です。しかし、今回の計画においては、高品質な生産エリアに加え「TGKの最先端の技術力」と「韮崎の豊かな自然」をアピールする工場がもとめられました。
そこから生まれたのが「山を登るように巡る工場」です。
具体的には、韮崎の風景を取り込むようにものづくりの心臓部である「製造空間」の周りに、「トレイル」と名づけた厚生エリアをぐるりと包含する形式を考えました。周囲に「トレイル」を巻き付けることで、外部と生産エリアの間にバッファーが生まれ、工場の心臓部である生産エリアに安定した環境を獲得できました。同時に、このバッファー空間からは「TGKの最先端の技術力」と「韮崎の豊かな自然」を眺めることができ、従業員や来訪者は、400mのトレイル空間を楽しみながら、健康的に登り下りすることができます。
このように、内部の製造領域と周囲の自然との接地面を最大化することで、企業の歴史や製造工程から雄大な山々までを巡る体験を生み出しています。
また、トレイルが表出した外観は、豊かな山々の「稜線」と呼応する景観を創出しています。
山々の稜線と調和する小庇は、伸びやかな水平線を描き、34.7度の角度をもつ稜線を構築しながら見つけ300mmの線で建物をぐるりと包含してゆきます。
この建物が働く人々・訪れる人々・地域の人々にとって、愛着のある建築として育まれ、「もうひとつの地域のアイデンティティ」となることを願っています。

BIM の活用による円滑な合意形成・現場検証
完成イメージを客先と共有しながら進めるため、BIMの活用と徹底した現場事前検証を行いました。
外装については、山岳風景の稜線に倣った小庇状のアルミパネルが外周を廻っており、デザイン上重要な要素でした。
正面のカーテンウォールと層間を跨いだ斜めのパネルの複雑な納まりの検討や、屋根を覆うシート防水材・アルミパネル部の干渉確認は、その複雑な挙動と形状に対し、BIMを用い3Dで検証を繰り返し、製作図に反映させることで高い精度で施工することができました。

構造設計主旨

韮崎固有の環境条件を考慮した構造計画
入れ子フレームによる山岳風景に開かれた架構形式と傾斜地質に配慮した基礎構造を採用しました。
また、座屈拘束ブレースを平面にバランスよく配置することで、繰返し地震にも対応可能なBCP対策としました。

トレイル(みち)を実現する入れ子フレーム
生産エリアの外周のトレイル(みち)に合わせて外周柱を内部にセットバックさせ、入れ子フレーム(外殻の内側にメインフレームを配置する架構)を計画しました。
入れ子フレームは内部のメインフレームに地震力を負担させ、外周は片持ち梁で支持する形式とすることで、ファサードやパノラマウィンドウを柱型のない空間とし、トレイル(みち)が外部環境とのバッファーとなるようにしました。

設備設計主旨

生産と建築を統合したリアルタイム自動化設備システム
大規模組立ラインに生産機器の運転状況と人の在/不在に対して、リアルタイムに連動した照明・空調自動制御システム「T-Factory Next」を導入しています。生産機器と人の状況を4つに分類し、モード別に照明・空調をコントロールしながら、環境設備の最適運転により快適性と省エネルギーを両立しています。
また、消費エネルギーをモニターで見える化した「T-Green BEMS」を導入し、エリアごとに分かりやすいグラフ表示を工夫しました。エントランスにデジタルサイネージを設置し、「T-Factory Next」の稼働状況や「T-Green BEMS」の省エネ効果を分かりやすく見える化することで、従業員の働き方に対する意識向上を図っています。
また、トレイルの軒天を利用して自然換気スリットを設置しており、重力換気システムにより中間期やBCPの際に、韮崎の涼風を工場内部に取り込むことができます。

エンジニアリング主旨

エンジニアリング技術によるスマート化運用
本計画は最先端工場「スマートファクトリー」をキーワードに多くのエンジニアリング技術を採用しています。
具体的には「見える化」「自動化」「つながる化」の3つをテーマに、最先端IoT技術を工場全体に展開した「自動搬送や立体自動倉庫による自動化」、「BEMSやBI(business intelligence) による見える化」、「RFID によるセンサー技術やMES(製造管理システム)によるつながる化」により、製造の自律的運用に対応できる施設づくりを実現しました。
このように、入出荷の管理、生産設備の稼働状況の把握、生産状況やクリーン度などの環境状況までモニタリングが可能であり、それらの管理点をつなげることで、迅速に全体を最適化する生産プロセスを構築しています。

担当

大成建設担当者
建築設計 平井昌志、古市理、鈴木智紘
構造設計 出雲洋治、矢島龍人、松原稔
設備設計 岩村卓嗣、穂苅伸博、鈴木真吾、小金澤淳
電気設計 岩村卓嗣、穂苅伸博、末吉剛
エンジニアリング 齋田洋二、青木泰輔、河口亮介、関澤知哉

社外受賞

2018年 グッドデザイン賞
2018年 平成30年度 山梨県建築文化賞 建築文化奨励賞
2019年 平成30年 照明普及賞
2020年 2019年度 日本建築家協会優秀建築選(100選)
2020年 第31回 電気設備学会賞 技術部門 優秀施設賞