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WORKS 2019

JR東日本ホテルメッツ札幌

用途:ホテル
所在地:北海道札幌市北区
延床面積:6,735.08m2
地上:13階

建築設計主旨

「FLAT on the Corner」をコンセプトに、従来の標準化されたビジネスホテルを解体し地域に特化したデザインを有する新しいモデルを構築することを目指しました。
「FLAT」は2つの意味を有します。1つは住宅の意の「FLAT」。
宿泊特化型ホテルと相反し、ここで過ごすことが目的となるようなホテルです。
北国という地域・環境特性に特化した、雪を溜めない外装の造形を行っています。
また、自然光を積極的に取り入れ、夜になると照明が街区を照らす大開口を設けていますが、ガラスやサッシの断熱性能、ヒートブリッジを防ぐディテール、換気を交えた効果的な空調により、北国の暖かい住宅「FLAT」を実現しています。
2つ目は平滑の意の「FLAT」。
免震構造を採用することで、13階建て、高さ43mの計画でありながら、厚250mmのRC壁と、厚300mmのフラットスラブから構築される柱型と梁型のない客室を実現し、構造体がファサードとインテリアになる機能美をもった建築としています。
また、断熱サッシと高性能Low-eガラスを利用することで、寒冷地にして腰壁のない高さ2.8mの開放的なフルハイト窓を設えました。
敷地は札幌駅に近接し2面道路に接している角地であり、平面計画ではコーナーから45度の線対称によるプランとし、その起点にはバルコニーを計画し、それを繊細に支えるRCの細柱を配置しています。
本建物に隣接している代々木ゼミナール札幌校(2013年竣工、同設計者)も、2面道路の角地を利用しカーテンウォールに面した廊下を作っています。
街区に対して抜け感を作り開放感を出すことで、札幌市街地との調和、雪国である立地に対応する新しい建物の在り方を提示しています。

構造設計主旨

良質な都市のストックとなる理想的な構造計画となっています。
ホテル建築としては希少な免震構造を採用し、地震被害の最小化と更新性の向上を図りました。
この免震構造と壁構造の2つを以って成立する無駄のない構造体は、象徴的に林立するコンクリートの板からなる景観を創出しています。同時に、均一な力の分散を可能とし、層間変形角1/1700という高い安全性を実現しました。
剛な上部構造と柔らかい免震層の組み合わせは、地震時の建物の揺れを最小限に抑えることが出来る最も理想的な構造システムの一つです。
建物の骨格となる客室階のプラン構成に合わせ、機能上必要となる間仕切壁や外壁を構造体として利用することで極めて剛強な上部構造を計画し、この理想的な構造システムを実現しました。
同時に、コンクリート壁柱とスラブで構成することにより柱型・梁型が出ない納まりとし、室内空間を最大限確保するとともに、規則正しく配列された壁とスラブは、空間を構成する象徴的なデザインとなっています。
また、計画上の課題であったコーナー部の鉛直部材には300N級の超高強度コンクリートを採用し、φ300mmの小径に抑えることでスラブの浮遊感を演出、水平と垂直が強調された美しいファサードを創り上げることができました。

設備設計主旨

立地環境を考慮し、積雪寒冷地対策を行いました。
積雪雪量を考慮した基礎高さとすることで、屋上設備機器の積雪時のメンテナンスを可能としました。
屋上ではさらに竪樋の凍結防止のため、凍結防止ヒーターを設置しました。
建物の全面の歩道にはロードヒーティングを行うことにより、歩行者の安全の確保を行いました。
また、屋上からの落雪防止をおこなうため笠木ヒーターの設置を行いました。
免震ピットの収まりが厳しいことから、設計段階からBIMの活用を行いました。
検討の初期段階でBIMを取り入れることにより、免震ピット内での設備機器の支持位置を明確化することや、躯体の可動範囲への設備機器の設置を避けることができました。
照明計画では、客室階はユニバーサルダウンライトを主体とした計画としました。
それに加えロビーでは、間接照明を曲線に入れることにより、意匠との調和を図りました。
照明器具は調光可能な計画とし、様々なシーンや時間帯での最適な照度設定を可能としました。
また、廊下・ロビーの照明の約半分を発電機回路とすることにより、停電時の利用者の照度を確保しました。
さらに事務所、フロントのすべての照明、コンセントを発電機回路とすることにより、災害時の最低限のホテル機能の維持を可能としました。

インテリアデザイン主旨

北海道の地に初上陸をしたホテルメッツにとって、プロトタイプとなる新しいデザインが必須となっていました。
「北国らしさ」がそのキーワードとなる中で、このホテルでは北国の地を最大限に体感してもらえるよう、北国の空気感を外から中へと連続的に取り入れ、そして内から外への光の木漏れ日が街区への賑わいになるホテルを目指しました。
狙ったのは建物の構造美と一体化。そぎ落とされたミニマルな空間は、北国ならではの簡素化されたデザインの集約なのですが、この構造美との一体化があってこそ映える空間となっています。
凍てつく空気とやわらかな木漏れ日を、北国の自然の色から採色したグレイッシュトーンとやわらかな照明で表現しながら、篭りたくなるような「FLAT(住宅)」な空間を造り出しています。

担当

担当
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
実施設計(設備) 三建設備工業株式会社
大成建設担当者
建築設計 中藤泰昭、柴崎耕平、高岩遊、阿部徹、山本春奈
構造設計 松本修一、藤山淳司、安田賀奈、山形有紀
設備設計 (基本設計)渡辺睦典、清水亜美子
電気設計 久保田祥彰、西村英俊、丹羽章仁
インテリアデザイン 大野博文、徳野博子

社外受賞

2020年 第21回 日本免震構造協会賞
2020年 第6回 インテリアプランニングアワード2020 入選
2020年 グッドデザイン賞