WORKS 2021

宮城技術革新センター

Miyagi Technology Innovation Center

  • 宮城技術革新センター

    緑の丘が目の前に広がる、開かれた印象の外観

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    山並みの風景と呼応する南三陸杉の大庇

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    「ウェルカムエコガーデン」を一望できる屋外テラス

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    緑に包まれた木の温もりが感じられるエントランスホール

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    開放的で内外を繋げる木の大庇がやわらかく浮かび上がる「イノベーションエリア」

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    ハイサイドライトから自然光が降り注ぎ、窓から取り込んだ風が通り抜ける吹抜広場「MIX」

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    周囲より床レベルを下げた大階段下の休憩スペース

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    多様で自由な働き方を促し、従業員同士の交流を促す「TeLaSu」

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    地域の学生が制作したアートを展示した応接室

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    製造装置や設備の更新性に優れた、技術者を育てる「ラボエリア」

用途
工場(研究所、事務所)
所在地
宮城県黒川郡大和町
延床面積
19,400m2
階数
地上4階、塔屋1階

建築設計コンセプト

宮城から世界へ

半導体製造装置を開発、製造する東京エレクトロン宮城本社工場の敷地内に本建物を計画しました。デジタル社会への移行による技術革新に伴い、半導体市場は拡大が予想されており、今後の更なる成長に不可欠な革新的な技術の創出と生産性向上を目指した、他企業との共同研究機能を持つオープンイノベーションの拠点です。

地域社会と繋がる

パートナー企業や従業員同士の交流を生み出し、新たな技術を創造する「イノベーションエリア」が本建物の顔となります。印象的な大庇は県産の南三陸杉で仕上げ、什器家具にまで木を徹底活用し、開放的でありながらも温もりを感じられる居心地の良い空間を実現しました。地域の学生が本施設のために制作したアートが来訪者の創造性を掻き立て、目の前に広がる緑の丘は泉ヶ岳方面の山並みの風景と調和します。出会うこと、語り合うこと、学ぶこと、そこから生まれる何かを育むこと、業界を超えた人々の繋がりから生まれる気づきや閃きを未来への可能性へと育む場所となります。

自然環境と繋がる

3、4階には、明るく開放感のあるコミュニケーション空間を中心とした「クリエイティブオフィス」が広がります。大きなハイサイドライトから自然光が降り注ぐ吹抜広場は、従業員同士のコミュニケーションを活性化し知的生産性を高めます。緑豊かな風景を望む南北の窓面には風を取り込む換気装置を備え、自然エネルギーの活用による省エネと快適な執務環境を実現しました。時間や天候に応じて表情を変化させる、多様な居場所を設えた内部空間は、自由な働き方を促し、従業員の生活のリズムを整え、こころと身体の健康に寄与するウェルネスワークプレイスとなります。

未来へ繋がる

製造装置や設備の更新性に優れた3つの共創空間を備えた「フレキシブルラボ」が本建物の核となります。革新的な装置技術を生み出すサプライヤー企業との共創空間(FIL※1)、次世代の生産技術を追求するパートナー企業との共創空間(PIL※2)、最高水準のトレーニング機会を提供し優れた技術者を育てる共創空間(TC※3)が新たな技術革新を促します。フレキシブルとは、空間の自由度を高めることではなく、共に成長する場を創造し続けることと考えます。利用者が自ら空間をチューニングし、この場を使い倒すためにはどのような質を求めるのか、時間をかけて議論を重ねてきました。色々な人の想いが詰まっているからこそ、今ここに描かれたコトはやがて醸成され、次の世代に受け継がれていきます。一人一人が積極的に行動し、発信し、挑戦を続けていくこと、イノベーションという夢のある未来がここから始まります。

※1:Futuretech Incubation Lab
※2:Production Innovatech Lab
※3:Training Center

構造設計コンセプト

建築計画から構造に求められた条件は、大きく以下の3つに絞られていました。

  1. 1.西側イノベーションエリア・リフレッシュダイニングの明るく開放的な空間
  2. 2.東側1~2階吹抜けのフレキシブルラボの自由度の高い空間
  3. 3.3・4階クリエイティブオフィスのフレキシブルな空間

これらを実現するため、まず構造的な特徴を抽出しました。本建物は、ラボ範囲は2階が吹抜けの大空間であり、エントランスにも吹抜けがあるため、2階部分は床が少なく、構造上は、1~2階を1層とした8.4mの階高となっています。そのため、階高が高い1~2階部分が3・4階に比べ層剛性が低く、地震時に変形が大きくなります。そこで、1~2階フレキシブルラボが3つの大きなラボで構成されていることを利用し、ラボ周りの内壁部分に座屈拘束ブレースを採用し、大地震時には地震エネルギーを吸収させるとともに、中地震に対しては剛性を付加させる計画としました。地震力をラボ周りのブレースで負担させることで、各ラボ内の自由度の高い空間を確保し、西側のイノベーションエリア・リフレッシュダイニングは長期荷重が支配的となるため、外周柱をφ139.8、φ190.7の細柱とすることができ、エントランス上部を通る渡り廊下を、上部屋根鉄骨部分からφ27.5の細径テンションロッドで吊ることで、明るく開放的な空間を実現しています。
3・4階のクリエイティブオフィスはフレキシブルな空間確保のため、ラーメン構造を採用しています。今回1~2階吹抜け部に座屈拘束ブレースを採用することで、1~2階部分と3・4階の剛性が同程度となるように計画でき、建物として特定層に損傷が集中することを防いでいます。

設備設計コンセプト

本建屋は事務室と複数のラボエリアが同居しており、様々な用途や要望に応えられる設備計画を行った。ラボエリアについてはクレーン走行に配慮した高天井の室、粉塵発生に対する集塵機対応など、将来の開発環境を見据えたフレキシブルなユーティリティ計画を1部屋毎に細かく対応しました。エントランスを含む事務エリアについては、東京エレクトロン宮城様の新たな顔となる建屋というコンセプトの基、意匠性の高い設えを達成するため、木フローリングに合わせた特注の空調床吹出しや間接照明、ルーバー天井への対応による黒色塗装などを採用しています。特に木天井部分や3階吹抜は天井納まりも厳しく、積極的に床吹出しを採用することで意匠性と設備納まりの両面で解決を図りました。更に計画・施工期にコロナ禍という特殊要因も加わったことで、施主との協議を重ねた結果、機械換気30m2/h・人は最低限の対応とした上で、事務室には自然換気装置とトップライトに設置した有圧扇による補助換気の導入に至りました。
電力は敷地内特高変電所より給電し、重要負荷には本建屋専用の非常用発電機にて72時間のバックアップを行っています。生産系電源の供給にはバスダクト方式を採用し、将来を見据えた電源容量の確保とフレキシブル性を持たせています。応接や会議の利用が見込まれる2階会議室には調光調色照明を配置し、多目的な利用に適した照明計画としました。また、事務室の照明は執務環境に配慮しグレアカット照明器具を採用するとともに、外光が多く入る連窓を活かして昼光利用による調光制御を行っています。

担当

担当
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
大成建設担当者
建築設計 宮崎伊佐央、勝又洋、石渡友輔、各務真弓
構造設計 小林治男、安藤広隆、多田脩佑
設備設計 鈴木真吾、小川聡
電気設計 鈴木真吾、林幸広
エンジニアリング 川井聡之、太尾田幸太、赤井亮太、岡崎政信、臼井豊

受賞

2022年 グッドデザイン賞
2022年 第35回 日経ニューオフィス賞 ニューオフィス推進賞

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