NEWS 2025.05

「蔵春閣」が作品選集2025に掲載

  • 本館劇場客席

    南側正面外観:高さ13.75mと木造2階建てとしては大規模。左は活用のために増築した付属棟(トイレ・厨房・事務室を新設)

  • 1階食堂

    1階食堂:当初、椅子式の洋風スタイルで食事を提供した。全体の造作は和風だが、土足利用のため床は寄木張り、シャンデリアが吊られた和洋折衷の意匠

  • 2階広縁

    2階広縁:当初、1階での食後に隅田川を眺めながら煙草を楽しんだとされる。左側の広間での舞などを楽しむ客席としても使用されたという

  • 2階広縁

    2階広縁:当初、1階での食後に隅田川を眺めながら煙草を楽しんだとされる。左側の広間での舞などを楽しむ客席としても使用されたという

  • 修繕の様子

    修繕の様子:(左上)軸組の腐朽部を接木等により補修/(右上)2階大広間天井を当初と同様の技法で復旧/
    (左下)1階食堂寄木床は清掃後浮きを1枚ずつ再接着、欠損部は補填/(右下)2階広縁大理石モザイク床は外れた石を再接着、欠損部は色を合わせた樹脂で補填

一般社団法人日本建築学会が2024年3月に刊行した「作品選集2025」に当社改修設計・改修施工作品(元設計は当社前身の大倉組)の「蔵春閣」が掲載されました。
作品選集の刊行は1989年に始まり、日本における優秀な建築作品の発表の場として国内外より高い評価を受けています。

一般社団法人日本建築学会:https://www.aij.or.jp/

蔵春閣

大倉喜八郎生誕の地によみがえる明治の迎賓館

蔵春閣は、1912年、明治・大正期の実業家・大倉喜八郎(1837~1928)が政財界の要人をもてなすために東京向島別邸内に建設した迎賓館です。
建設以降約100年の間に、震災、戦災、接収、船橋市への移築、飲食店への用途変更や複数回にわたる所有者の変更を経ていましたが、当初の内外装や部材に加え、喜八郎が蒐集した美術工芸品の多くも健全な状態で残されていました。
2012年に移築を前提に解体し、10年の保存期間を経て、2023年に喜八郎の生誕地である新発田市に移築しました。移築にあたっては、現行基準への適合により、大切に受け継がれてきた明治期の貴重な意匠や材料が失われないよう、解体した蔵春閣を新発田市の景観形成重要建築物へ登録し、建築基準法適用除外制度を活用しました。
ただし、将来の活用を考慮した安全・安心の担保は必須です。構造は、積雪荷重も踏まえ現行基準と同等の耐震性能を確保しました。防火避難規定のうち、現行基準に適合できない部分はハード・ソフト両面から代替措置を講じ、内外装に影響を与える改修を必要最小限にとどめました。
2023年4月の開館以降7万人を超える方が訪れ、2024年3月には国登録有形文化財に登録されました。見学以外にも当初の用途でもある会食などに積極的に利用され、新発田の新たな地域活性化の拠点、ランドマークとして再び歴史を刻み始めています。

平面図
改修断面図

主な補強内容

軸組:既存壁および軸組内部に、構造用合板を用いた耐力壁や鉄骨フレームを配置して必要耐力を確保
小屋組:多雪地域への移築により垂直積雪量が130cmに増大し、桔木・垂木の許容応力度と先端のたわみ量が制限値を超えたため、小屋組み内部に鉄骨桔木を追加
床組:部材追加や補強の必要はなかったが、地震力を伝達させるために、床板の下張りを構造用合板に置き換え水平構面を固めた
その他:地盤補強、柱と土台の基礎緊結、柱頭・柱脚部の接合補強、柱頭・柱脚部の接合補強、劣化・損傷部の補修など

建物概要

  • 建築主
    公益財団法人大倉文化財団
    所在地
    新潟県新発田市諏訪町1丁目1089の一部
    用途
    集会場
    構造
    木造
    階数
    地上2階
    敷地面積
    2,116.94m2
    建築面積
    222.27m2
    延床面積
    296.87m2
  • 工期(改修)
    2020年10月 ~ 2023年03月
    設計(改修)
    大成建設株式会社一級建築士事務所
    施工(改修)
    大成建設株式会社北信越支店
WORKS:
蔵春閣

大成建設担当者

  • 松尾浩樹
    建築設計
    松尾浩樹
  • 中谷扶美子
    建築設計
    中谷扶美子
  • 池間典一
    設備設計
    池間典一

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