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WORKS 2018

KiTARA

用途:集合住宅、老人福祉施設、店舗、事務所、駐車場、神社
所在地:愛知県豊田市
延床面積:55,725.94m2
(商業棟)地下2階/地上8階
(高齢者棟)地下2階/地上8階
(住宅棟)地下2階/地上26階

建築設計主旨

豊田市駅から東へ延びる駅前通り北地区の第一種市街地再開発事業です。
東西約170mの細長い敷地形状なので大きな壁となる1棟建てとせず、用途ごとに、商業棟(西棟)、高齢者棟(中央棟)、住宅棟(東棟)の3棟に分けて街のスケールになじむ様に配慮しています。また、低層部を1、2階で動線的につなぐことで一体感を持たせています。
かつて街の魅力であった「そぞろ歩き」をキーワードに、それぞれの棟間に南北の通り抜けをつくり、そこに広場を設けることで賑わい要とし回遊性を持たせています。また、敷地内にあった由緒ある喜多神社と山車蔵を曳家等で広場に再配置することで記憶の継承と再生を図り、街の回遊動線を確保しながらヒューマンスケールな賑わいの創出に貢献しています。
商業棟には、9スクリーンのシネマコンプレックス、高齢者棟には多種類の介護度に応じた高齢者施設が入り、住宅棟は、約160戸の集合住宅が入ります。また、低層部には、約20区画の商業店舗が並び、地下には約300台の駐車場が入っています。
住宅棟は、駅から離れた東側に配置することで快適な住宅環境と眺望の広がりに配慮しており、都市の中心に住まうモデルケースとなる高層集合住宅を実現しています。
また豊田市(旧拳母町)は、明治から大正にかけては紡績の街として発展した歴史があり、階毎に積み重ねたスラブをその歴史に見立て重厚な外観としています。
インテリアにおいては、豊田市にゆかりのある素材やモチーフを紡ぐことをテーマとして柔らかな内部空間とすることを意図しています。
グランドエントランスの壁面には、旧拳母藩の麻の葉文様や菱形をモチーフにしたデザインクロスを採用しています。
高齢者棟は、中央に配置することで建物内に居ながら街の音、地域の息遣いを身近に感じることができ、外と繋がっていることの喜びを自然に体験できる都市型高齢者施設を実現しています。
紡績の街としての歴史から、高齢者棟と低層部の縦と横のルーバーを用いたファサードは縦糸横糸をモチーフにしており街の人々と共に新たな時を紡ぐことを意図しています。
インテリアにおいては、各施設のユニットごとに昭和、数奇屋、モダンなどの志向の異なる空間を演出しています。
さらに屋上には眺めの良い回遊式庭園を設けており、利用者が草花に直接触れ合えたり、菜園でのガーデニングなどのアクティビティを助長する事を意図しています。

構造設計主旨

商業棟、高齢者棟、住宅棟は、1階から上部は商業棟と高齢者棟をつなぐ連絡通路がありますが、構造的にはEXP.Jで接続された3棟の建物です。ただし、地下部では3棟を一体とした構造形式としています。
構造計算は、主に商業棟、高齢者棟および地下、住宅棟の3つに分けて各々で検討を行っていますが、位相差を考慮し、1階床スラブの面内応力に対しての安全性も確保しています。基礎形式については、直接基礎のべた基礎(マットスラブ形式)としています。住宅棟は、2階の連絡通路で高齢者棟と連結していますが、EXP.Jで接続されており、構造的には地下、地上含めて別棟とした計画としています。
商業棟は、軒高約47m、地上8階、地下2階の鉄骨造(地下は鉄骨造+鉄筋コンクリート造)です。構造形式は、両方向ともブレース併用のラーメン構造です。ブレースには座屈拘束ブレースを採用し、耐震性能の向上を実現しています。
高齢者棟は、軒高約33m、地上8階、地下2階の鉄筋コンクリート造です。構造形式は、両方向ともラーメン構造としています。
住宅は、軒高約84m、地上26階、地下1階の鉄筋コンクリート造です。高強度材料(柱の最大コンクリート強度Fc60、柱の主筋にUSD590級鉄筋)を採用することで、耐震性能及び耐久性能の向上を実現しています。また短辺方向の塔状比が4~6程度で比較的大きいため、4階から18階までに極低降伏点鋼LY225を使用した制振間柱を配置し、大地震時の建物の揺れを低減させる計画としています。基礎形式については地震時に生じる引抜力に抵抗するため、場所打ちコンクリート杭を採用しています。

設備設計主旨

豊田市は、環境モデル都市として、無理なく無駄なく快適に続けられる低炭素な暮らしを目指しています。
再開発事業にあたり、下水熱利用給湯システム、街区のBEMSと住宅のHEMSを導入しました。
高齢者棟は、街区全体を一括管理する防災センターを2階に設置しました。防災センターでは、中央監視装置による機器管理、BEMS連動によるHEMSを含めたエネルギー管理、火災監視、防犯カメラ監視、街区内放送等の集中管理を無休で行っています。
停電災害に備えた72時間運転可能な発電機を商業棟に設置し、高齢者棟へは高圧配線による送電を行います。
入居者が最低限の生活を維持できるよう、防災機器、最上階へのエレベーター、事務室や廊下照明、共用室照明コンセント等が使える構成としています。
屋上には系統連携太陽光発電10kWを設置し、停電時は携帯電話充電用に2箇所の専用コンセントを設置しました。
浴室や機械浴設備での給湯は、下水熱利用給湯システムを採用しました。下水の温度は年間を通じて20℃前後で流量も安定していることから、下水熱は有効な未利用エネルギーです。豊田市の下水道管を流れる未処理下水から熱を回収して、水熱源ヒートポンプ給湯機によりお湯をつくり、毎日の入浴に使用していただいています。
高齢者が快適に過ごせる居住空間、職員が介護しやすい設備を目指して設備計画を行いました。
外気処理エアコンによる給気、居室ごとに運転が可能なルームエアコンと換気設備により、年間を通じて快適で、居住者個人の好みに合わせた空調環境を実現しました。
住宅棟は、大成オリジナルのT-Green HEMS Lite導入の1号プロジェクトです。住戸内のみならず、街区全体のエネルギーを可視化したシステムの中核を構成しています。
エネルギー情報を表示する表示機としては住戸インターホンを使用し、スマート分電盤を設置し電流計測を実施、ガス使用量も別途計量しています。住宅用データ収集装置で過去2年分のデータを蓄積し、期間データを部屋別、用途別グラフ表示します。また、前期データとの比較で節電量を算定し、グラフ表示による電力使用量の削減率確認が可能です。
高圧受電は住宅棟単独での受電とし、一括受電方式を採用することにより、電気料金のおよそ5%の削減を可能としています。
住宅キッチンにはディスポーザーを設置し、ディスポーザー排水処理槽の臭気は土壌脱臭方式で処理しています。

担当

担当
設計 株式会社日建設計(商業棟・全体共用)
大成建設株式会社一級建築士事務所(住宅棟・高齢者棟)
大成建設担当者
建築設計 黒岩光浩、教誓勉
(住宅棟)渡邉智介、傳法一成、渡邊英一
(高齢者棟)三浦友巳、渡邉ゆたか、團塚紀祐、森拓路、有泉祐子
構造設計 服部敦志、中島徹、阪井由尚、菅野貴孔
設備設計 熊谷智夫、小野田修二、吉田典彦、久保田宗人、長徹、矢後佐和子
電気設計 熊谷智夫、小野田修二、種市文彦、齋藤允喜哉、星野顕
ランドスケープ 小倉満、神田祐樹
インテリアデザイン (住宅棟)大野博文、星絵里香