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WORKS 2018

Studio Tanta

用途:音楽スタジオ
所在地:東京都渋谷区
延床面積:2,324.41m2
地下:2階/地上:7階

建築設計主旨

代々木公園が目の前に広がる交差点に、文化発信の拠点となる音楽スタジオが誕生しました。
様々な用途で利用できる音響空間に加え、従来の音楽スタジオにはない、緑に包まれた開放的なラウンジやレストランを備えることで付加価値を高めました。
現場打ちのコンクリートのフレームによる素材感のある外観は、季節や天候によって微妙に表情を変え、多彩な内部空間は都市の変化にのみ込まれることなく森に流れる穏やかな時間の中で存在し続けます。
一般的に、音楽スタジオは外部から音を遮断するために閉鎖性が必要な空間「VOLUME」で構成されます。
本計画では、余剰空間に緑を望む舞台「STAGE」を積極的に設けることで付加価値を与え、緑とスタジオの間に生まれた多種多様な空間を抽象的な骨格「GRIDFRAME」で包み込みました。
このフレームは音楽に規律を与える五線譜のような役割を果たし、森の穏やかな時間を呼び込み、交差点に佇むランドマークを形成します。
音楽が消費される時代において、人々の心に刻まれ語り継がれる音楽をこの場所で育むという想いを空間化しました。
音楽スタジオは、アコースティックな音楽が気持ちよく響く空間を目指し、最先端の音響設計技術により、楽器のような木質の深く厚い響きを実現しました。
ラウンジやレストラン、テラスは開放的なステージとして、代々木公園の緑を望む大きな窓から自然光を取り込み、中間期には外気を取り入れ、自然エネルギーを活用した心地よい空間を実現しました。
「STAGE」から望む風景が森を眺める方角や高さの違いにより変化し、多様な居場所を創出します。
手作り感のある素材は、季節の移ろいや天候によって微妙に表情を変え、森の時間の流れと呼応します。
仕上げ材料は、大切な楽器を扱うように手入れをしながら長く使い続けていくことを前提に、コンクリートや緑と馴染む天然木や左官塗りを多用し、自由に、楽しく、そして丁寧につくり込みました。

構造設計主旨

隣地側のL字型壁(壁厚:450~600mm)とコア周辺壁(壁厚:600mm)を連層耐震壁とし、それらを連携させて力がスムーズに流れるように工夫することで、公園への眺望を確保した開放空間とレコーディングスタジオの閉鎖空間が積層する構造を実現しました。
特に建物下層部では、1.重厚な鉄筋コンクリート建物を支持する鉄骨無垢柱(φ200)、2.高い強度と変形性能を持つSRCフレーム・ブレース、3.剛体スラブ(3階床厚:450mm)といった構造部材で構成し、それらを強固に一体化させることで、建物がねじれようとする地震時の揺れを制御しています。
遮音性だけでなく、剛性や耐力が大きい鉄筋コンクリート壁を利用しながら、音響性能にすぐれたスタジオだけでなく、公園に開けた開放的なレストランやラウンジを実現しました。

設備設計主旨

夜になると代々木公園の森は暗い闇に包まれ、車のヘッドライトが足元を照らすものの辺りは一段と暗くなります。
そこで、建物が街に明かりを灯す大きな行燈のような役割を持つような、夜のランドマークとなるライティングを目指しました。
グリッドフレームに仕込んだ色温度3000Kの照明器具が、コンクリートのフレームを照らし上げ、建物全体をやさしい光で包み込みます。
構造柱が仕上げを兼ねているため、コンクリート主筋の内側に配管を仕込むことでひび割れを防止し、2層ごとに照明制御ができるように配線ルートを確保しました。
光で照らし上げられる綺麗なフレームが現場打ちコンクリートの精度の高さを物語っています。
音楽スタジオは、振動測定や電界強度の測定など環境測定を行い外壁の厚みを決定し、十分な遮音性能を確保しました。
専用の空調設備により室の静けさを保ち、スプリンクラーと機械排煙の設置により内装制限を取り払うことで自由度の高い内装計画を可能とし、最適な音響空間を実現しました。
また、冠水対策として、受変電・発電機設備は屋上、高圧キャビネットは敷地内で最もGLが高い場所に設置しました。
停電時の保安用電源は、共用電源やポンプ・ELVの他に、最上階の住宅で生活ができるように電源を確保しました。

担当

担当
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
音楽スタジオ設計・施工 日本音響エンジニアリング株式会社
照明デザイン ライティング プランナーズ アソシエーツ
大成建設担当者
建築設計 田口晃、金岡利人、東聖子、勝又洋、上田恭平、待鳥絢子
構造設計 早部安弘、一色裕二、大野瞳
設備設計 梶山隆史、藤村淳一、長徹、小金澤淳
電気設計 梶山隆史、土屋暁子

社外受賞

2019年 グッドデザイン賞
Technology & Solution:
Studio Tanta