HOME > WORKS2019 > 京急グループ本社

WORKS 2019

京急グループ本社

用途:事務所、展示場、保育所
所在地:神奈川県横浜市
延床面積:25,831.99m2
地下:1階/地上:18階

建築設計主旨

横浜の地に建つ、京浜急行電鉄(以下、京急)とグループ会社を含め計11社からなる京急グループ本社の新社屋です。
京急は三浦海岸(海)から横浜を経由し、羽田空港(空)まで繋がる沿線であることから、新社屋のデザインコンセプトとして「海に開き、空高く羽ばたく京急を体現するデザイン」を掲げました。
地上に面した1階に「京急ミュージアム」を設け、公開空地となる外構と共に街に対し賑わいを創出しています。
ペデストリアンデッキから接続する3階にエントランスホールを設け、「京急ミュージアム」と吹抜けを介して繋がる立体的な賑わいを内外に対して発信します。
低層部は、大きなガラス面により、海のような透明感と広がりを創出し、外構や内装には木・土・石の自然素材によるさざ波を想起させるデザインを随所に施しました。
執務室とコミュニケーションフロアが積層する高層部は、伸びやかな縦ストライプの壁柱と竪フィンが、時間の移ろいによって表情を変え、空へ向かって力強く伸びる外観デザインとしました。
また、都会の街並みや空の移ろいを想起させるインテリアデザインは、社員のエンゲージメントを高める計画となっています。
「人に優しいオフィス」を目指し、省エネ且つ快適と健康に寄与する様々な取り組みを行いました。
窓廻りにはD250mmの竪フィンによる日射遮蔽に加え、Low-Eガラス、簡易エアフローにより、ペリメーターゾーンの省エネと快適性の向上を両立しています。
執務室内は、柱型の無いフレキシビリティが高い執務環境を実現すると共に、人検知センサーによる照明・空調の個別制御で、大幅な省エネを図っています。
各階のエレベーターホールでは、それらの省エネ効果を見える化し、社員の省エネに対する意識の向上を図っています。
また、共用部には、各階に目的や使い勝手に応じた多様な執務スペースを配置しました。
2層毎に性質の違うインタラクティブスペースやオープンパントリー、3層毎にテーマを変えたリラックススペース、リフレッシュスペース等は、オープンな共用階段や事務所内の専用階段によって上下階への移動を促します。
働く場所の自由選択性とマインドチェンジをもたらすこれらのシカケは、インフォーマルコミュニケーションを誘発すると共に、ウエルネスにも寄与する職場環境を創出しています。
最上階には、カフェを配置したコミュニケーションフロアもあり、昼食時はカフェテリアとして機能し、それ以外の時間は自由に誰もが使えるスペースとなっています。
南北に配置したスカイテラスはアウターワーキングスペースとして人気が高く、すべてのオフィスフロアをワークスペースとして有効に機能させることに成功しました。

構造設計主旨

構造計画を進めるにあたり、建築主の要求事項として以下の2点が挙げられました。
・免震構造の採用による高い耐震安全性を確保する
・事務所階において専有面積を最大限確保し、資産価値を高める
以上の要求に対して、当社にて開発、実施適用を進めている鉄筋コンクリート造の扁平柱(壁柱)を利用した架構と免震構造を組み合わせた構造形式「TOLABIS(TAISEI OUTER PLATE COLUMN BUILDING SYSTEM with ISOLATION STORY)」を採用することで、高い耐震安全性とフレキシブルなオフィス空間を両立する計画としました。
免震層上部架構の水平剛性は、建物外周に配置した壁柱および梁で構成される鉄筋コンクリート造のフレームにより確保しました。
内部空間は、建築計画に合わせた床組の構成にできるため、室内に柱型が出ない整形でオフィスレイアウトの自由度が高い空間を実現しました。
低層部は純ラーメン構造としており、大梁は約21mのロングスパンとなるため、端部は鉄筋コンクリート造、中央部は鉄骨造の複合構造梁を採用しています。
低層部と高層部の柱は、5階に設けた梁せい2,500mmの基壇梁を介して受け替え、柱本数・免震支承基数を抑えています。
免震層を1階床下に配置した中間層免震となっており、免震方式は天然ゴム系積層ゴム支承とオイルダンパーを組合せたハイブリッド免震で、中小地震から免震効果を発揮できます。
また、「杭頭半剛接合(F.T.Pile)構法」の採用により、地震時の杭頭部の損傷を最小限に抑え、地震に強い建物を実現しました。

設備設計主旨

鉄道事業を担う本社機能とグループ各社が集約される本施設では、災害時の機能維持を重要な視点として位置づけ、さらに省エネルギー・環境配慮・エネルギーマネジメントに配慮した設備計画を行いました。
本敷地では、地域冷暖房からの冷水/蒸気による熱源方式を主体としながらも、中圧ガスコージェネレーションシステムを構築し、非常用発電機(72時間)と合わせて電源自立化を図るとともに、バックアップ用熱源として機能します。
災害時にはインフラ備蓄残量を見える化し、施設機能維持の継続時間が予測可能となっています。
基準階事務所フロアは、簡易エアフローによる日射負荷低減、全熱交換器組込による空調機(外気冷房、CO2制御、外気シャットオフ、ナイトパージ制御)の他、1.8m×1.8m単位で人の在不在を検知する次世代人検知センサーを全面的に設置し、在不在に応じた細やかな照明制御を行い、快適性を損なわずに省エネルギーを実現しています。
熱源システムでは、地冷冷水の直接建物内利用や冷温水切替型の蓄熱槽により、環境負荷とランニングコストの低減を図っています。
エネルギーマネジメントでは、電力供給側(受電・CGS発電・太陽光発電)、熱供給側(地冷・CGS排熱利用・蓄熱放熱)、需要側(各階・設備用途ごと)について細やかな計量・計測を行い、エネルギー見える化を行うとともに、今後のエネルギー運用の最適化を図ることができます。

担当

担当
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
エントランスホール内装監修 隈研吾建築都市設計事務所
大成建設担当者
建築設計 伊勢季彦、渡邊岳彦、大塚隆光、傅藝博
構造設計 松本修一、藤山淳司、野々山昌峰、金野聡美、山形有紀
設備設計 小野田修二、山口亮、安田勝彦
電気設計 小野田修二、山口亮、松浦尚彦

社外受賞

2020年 日本空間デザイン賞2020 オフィス空間グループ 入選
2020年 日本サインデザイン賞 入選