WORKS 2020

日本たばこ産業医薬総合研究所横浜リサーチセンター

JT Central Pharmaceutical Research Institute Yokohama Research Center

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    DNAパターンをあしらったPC による外壁はモノレールの車窓から見え、医薬事業の発展を象徴

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    金沢八景近くの東京湾を臨む敷地。樹木は極力残し、地域環境との共生を図った

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    実験廊下や居室から柔らかい光が滲みだす夜景

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    海へと開かれた最上階の研究居室は張弦梁ののびやかな架構

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    1階の美しくライトアップされたガラスのアートウォールは可動式で、その重なりによって季節の表情を演出

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    各階リフレッシュスペースは、外の緑が心地よい空間

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    5階南側に設けられたリフレッシュコーナー。海を眺めながら気分転換することができる

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    1階のカフェテリア。食堂としての利用のほか、プロジェクタなどを用いて研修やセミナーなども行われている

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    自然光の入る明るい実験室廊下

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    マラソンコースや休憩スペース・既存施設のサイン・テニポンコートをめぐることのできるランドスケープ

用途
研究所
所在地
神奈川県横浜市
延床面積
19,529.58m2
階数
地下1階、地上8階、塔屋1階

建築設計コンセプト

近年の医薬品分野では、グローバルに研究者争奪が熾烈化し優秀な研究者を獲得するため、研究者が快適・創造的に過ごす環境の構築が最優先事項です。当企業における医薬事業の研究開発施設は、従来、薬の種を探す開発初期段階を担う探索研究所が敷地内にあり、薬の安全性を評価する開発最終段階を受け持つ安全性研究所が神奈川の秦野市に分散していました。
今回それらの異なる分野の研究者をひとつの場所に集めて、互いにアイデアを創発し合える「共創型研究所」を目指しました。そこで「つどう、ひらめく、うみだす」をコンセプトに、様々な個性を持つ研究者が潜在化している能力を引き出し、スピーディに開発できる研究所のあり方を各フェーズで議論しました。既存の素晴らしい海への眺望や豊かな森という長所を活かし、塩害、津波や地震という短所を克服する施設づくりが求められました。
計画では、組織設計事務所・ゼネコンや二分野の研究者だけでなく、照明デザイナー、サインデザイナー、ランドスケープ、什器・展示設計者、実験エンジニアなど多くの専門家が参加して、ハードとソフトが融合した研究者交流拠点が実現しました。
「使い方ワークショップ」など、研究者や専門家を巻き込んだイベントを随時開催し、研究者がアイデアを生み出すため、静から動、個から集団といった観点で大小様々な創発空間を皆で考えました。その過程で「ABW&ウエルネス」という新しい働き方コンセプトが生み出され、グループアドレスオフィス、展望ラウンジ、籠り部屋、アスレチックルーム、BBQ広場、ランニングコース、JTの森など多様なアクティビティを包含する建築へと実を結びました。
竣工後も、建設計画メンバーが施設委員会を継続して、使い方をアップグレードし、新旧融合した森の成長とともに建物自体もより使い易く快適な場に育てられています。

構造設計コンセプト

約64m×60m のほぼ正方形形状の建物の平面形状に対して、基準スパンは桁行方向6.4m、梁間方向13.5m の鉄骨造(一部柱CFT造)とし、ブレース付きラーメン構造を採用しました。大地震が発生した場合の研究者の安全に加え、研究・実験の継続性を確保するため「免震構造」としました。
設備更新のためのISSフロアを階高相当の構造梁として構築し、建築・設備と構造を融合させています。設備配管の方向性を考慮しつつ、床剛性(V-70)を確保するため、フィーレンディール架構と方杖架構を併用しています。
業務に応じて働く環境を選ぶことで、部門を横断したシナジー効果を生むことが意図された開放的なフリーアドレスオフィスは、東京湾への眺望を最大限確保した快適な空間を実現するため、スパン18mの張弦梁、ピン接合の細柱(φ120mm)で構築した700m2超の無柱空間としています。張弦梁の張力導入は、仮設サポート・ジャッキを用いて施工ステップを工夫することにより行いました。

設備設計コンセプト

各実験室、飼育室の上部にISS階を設置し、実験機器や設備機器の更新やメンテナンスなどを行いやすい計画としました。また、給気ダクト用と排気ダクト用の2箇所のメカニカルシャフトにより、設備の更新性やメンテナンス性を高めています。動物飼育・実験環境を維持するためにオールフレッシュ空調方式やベンチュリーバルブ型VAV、サーカディアン照明の採用、クリーンルームの気密性を確保したまま天井裏からのランプ交換が可能な照明器具を採用しました。
機器類の複数台配置や2回線の電気引込みにより、災害時やメンテナンス時の対応に備えています。災害時でもエリア・機能を限定し、継続的に3日間運用できるように備えています。

ランドスケープコンセプト

研究所のランドスケープ計画において、敷地周辺の地場植生を調査し、それらを生かした遊歩道の森で研究員の憩いの場を創出しています。既存の樹木も可能な限り保存し、愛着のある土地の記憶の継承とともに、環境負荷の軽減に努めました。

担当

担当
基本設計 株式会社山下設計
実施設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
工事監理 株式会社山下設計
大成建設担当者
建築設計 高村潔、坂田保司、古市理、五頭賢彦、吉池葉子
構造設計 早部安弘(1期)、山崎英一(2期)、一色裕二、荒川琢也(3期)、大野瞳(1期)
設備設計 岩村卓嗣、安田勝彦(2期)、三村渉(1期)
電気設計 岩村卓嗣、大櫃卓也
ランドスケープ 小池亘

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