WORKS 2020

瑞泉閣

Zuisenkaku

  • 正面北西外観

    正面北西外観:嘉仁親王が宿泊した洋館と、従者が使用した和館が並ぶ外観。平成19年に経済産業省の「近代化産業遺産」に認定

  • 北側外観

    北側外観:外観を印象づける3本の煉瓦積煙突は地震時に倒壊する危険性が高く、現在使用していないことから、FRPで忠実に再現し外観を保存

  • 控の間・謁見の間・御座所

    控の間・謁見の間・御座所:暖炉やシャンデリアなど華麗な装飾にあふれる洋館内部。補強部材を一切見せない耐震補強

  • 御座所

    御座所:嘉仁親王が執務を行った部屋

  • 御寝所

    御寝所:嘉仁親王が宿泊した部屋。テラスを通して日の光が差し込む空間

  • 廊下

    廊下:面する庭には今も陛下手植えの樹木が残る

  • テラス

    テラス:御寝所を取り囲んで配置され、窓を開けると製鋼所を見渡せる

  • 控の間

    控の間:天井メタルシーリングや木製建具・造作、照明器具など、創建時の貴重な内装材は補修し再利用

  • 暖炉

    暖炉:マントルピースは現在では入手困難な外国産大理石で制作

用途
迎賓館
所在地
北海道室蘭市
延床面積
517.555m2
階数
地上1階
Technology & Solution:
瑞泉閣

建築設計コンセプト

110年間変わらぬ姿で「鉄のまち」を見守る迎賓館の継承

明治44(1911)年、皇太子嘉仁親王(後の大正天皇)の北海道行啓の折、日本製鋼所が建設した応接・宿泊所である。煉瓦造の洋館と木造の和館からなる和洋館並列型建築で、現在も同社の重要顧客を迎える迎賓館として大切に使用されています。次の100年を見据え、2008年の和館耐震改修に続き、今回、洋館の耐震補強、設備改修、経年劣化部分の補修を行いました。
計画にあたっては、これまで維持されてきた外観や貴重な内装をそのまま保存することを目指し、①補強部材を一切見せない耐震補強、②貴重な既存材の再利用、の2点を基本方針としました。内部意匠は、壁紙と絨毯は創建時のものが失われていましたが、メタルシーリング、腰木壁、建具や暖炉、照明器具などは当初のものが維持されており、劣化部分を補修のうえ可能な限り再利用しました。
瑞泉閣は近年、近代化産業遺産や日本遺産に選ばれるなど、年々その価値が高まっています。本保存改修においても、文化財的価値を損なわないよう十分に配慮した工法の選択を行いました。今後も長く室蘭の鉄鋼の歴史を語る建築として、地域の歴史の継承に貢献していくことを目指しました。

構造設計コンセプト

補強部材を一切見せない耐震補強

煉瓦造の耐震補強では、煉瓦壁自体に耐震性が期待できないことから、屋内外に鉄骨やRC壁を設置し、外観や内部意匠が損われる工法がとられることがあります。しかし、本工事では外観や貴重な内装をそのまま保存するため、耐震補強はれんが壁自体に耐震性を持たせる「れんが壁プレストレス工法ポストテンション方式」を採用しました。高さ6.5m、奥行45cmのれんが壁に垂直に孔をあけ、65本の高強度鉄筋を挿入、約100kN/本の緊張力を導入しています。新設した鉄筋コンクリート臥梁や鉄骨ブレースを含め、補強部材はすべて煉瓦壁内、小屋裏、床下の見えない範囲に納めています。

設備設計コンセプト

今日の迎賓館として、快適性を向上

創建時は暖炉以外の暖房設備はありませんでしたが、昨今の気候変動への対応と礼装で来られる来館者の快適性を考慮し、2008年改修時に空調設備を導入しました。この際、室内の華麗な意匠を妨げないよう機器は小屋裏に設置し、天井メタルシーリングの目立たない位置にブリーズラインを新設しました。今回工事ではこの空調設備を更新したほか、湿気対策として床下に土間コンを新設、断熱性能向上のために床下及び天井に断熱材を新設し、快適性のさらなる向上を図りました。
また、照明器具は創建時からの既存器具を保存し、LED化を行いました。

担当

担当
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
大成建設担当者
建築設計 杉江夏呼、中谷扶美子
構造設計 藤村太史郎、井之上太
設備設計 山本進
電気設計 藤間一憲

社外受賞

2020年 作品選集2021-2020

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