WORKS 2022

OKI本庄工場H1棟

OKI HONJO FACTORY H1 BUILDING

  • 北西側鳥瞰

    北西側鳥瞰:本庄の新たな顔となる工場

  • 北側外観

    北側外観:JR高崎線より工場を見る

  • 北東側外観(夕景)

    北東側外観(夕景)

  • 北側車寄せ

    北側車寄せ:秩父産貫材による杉本実RC壁

  • エントランスホール

    エントランスホール:見学者に施設見学の高揚感を与える

  • エントランスホール

    エントランスホール:本庄絣によるアートウォール

  • CLTバックマリオン

    視線・日射制御に最適化されたCLTバックマリオン

  • ショールーム

    ショールーム

  • 建設残土を活用したレンガ

    建設残土を活用したレンガ

  • CLT耐震壁

    CLT耐震壁は生産エリアに木の温もりを与える

用途
工場
所在地
埼玉県本庄市
延床面積
18,837.72m2
階数
地上2階、塔屋1階

建築設計コンセプト

地場材を取り込み地域とつながるゼロカーボンファクトリー

沖電気工業の創業150周年に向けた「モノづくり基盤強化」 の一環として、老朽化が進む施設を更新するために新たな生産拠点を建設する計画です。本庄工場は60年間地域と共に歩み、成長してきました。地域の歴史や文化・風土といった魅力を積極的に取入れ、地域とより強くつながり、この地に根差した工場が出来ないかと考えました。
そこで私たちは、実際に現地でフィールドワークを重ね、ひとつひとつキーワードを集め紡ぐ活動を行いました。埼玉県本庄市は中山道の陸路と利根川の水路という交通の結束点であり、江戸時代より中山道最大の宿場町として栄えてきました。古くから木・絹・土の資源循環が地域によって培われてきたことから、工場の木造化として「秩父杉」、空間に伝統と優しさを与える「本庄絣(ほんじょうかすり)」や建設残土を練りこんだ「煉瓦」を採用しました。
特に木材は埼玉県秩父市と連携し、本庄工場が属する利根川水系の上流域の山から杉を切り出しました。木材はCLTとして製材され、耐震壁・防火柱などの構造材や防耐火材として利用すると共に、工場という殺風景になりやすい空間に木の温かみを与え、従業員の労働環境の向上に寄与しています。この工場には合計206m3の木材を採用し、CO2 固定量に換算すると119tの建材として建築物に貯蔵しています。
2023年6月には、沖電気工業と大成建設の建設関係者による木材を伐採した山へ24,000本の植林を予定しており、埼玉県秩父市と連携した「伐って、使って、植えて、育てる」の森林循環システムを形成しています。

構造設計コンセプト

本計画では、フレキシビリティの高い工場空間を実現することに加えて、大地震後の工場機能の維持などBCP(事業継続計画)への配慮が構造上のテーマでした。生産エリア内は、格子状の平行弦トラス梁による大スパン架構で20m×18.75mの無柱空間を実現し、トラスのせん断力が小さいスパン中央部の斜材をなくすことで、天井内のメンテナンス動線や配管ルートの自由度を高めました。
大地震後の工場の機能維持のため免震構造を採用し、免震装置と1階鉄骨梁をメタルタッチ接合とすることで短工期化を図りました。生産エリアの東西外壁面に、厚さ210mmのCLT耐震壁を設け、建物に水平剛性を付与し建物の変形を抑制しています。
脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして工場の木質化を掲げ、構造部材への適用を積極的に行いました。先述のCLT耐震壁に加え、屋根面の水平剛性を高めるCLT天井、ガラスファサードの耐風部材となるCLTバックマリオン、鉄骨柱の防火被覆材としてもCLTパネルを利用しました。

設備設計コンセプト

SDGs達成、脱炭素社会の実現に向けて、エネルギー多消費施設である工場の大幅な消費エネルギーの削減を目標に計画しました。建物の外皮負荷削減や自然エネルギーを活用する等パッシブな技術を採用しつつ、設備機器は最新の高効率な設備機器を採用しています。屋根には497kWの太陽光発電設備を導入することで、BELS認証にて最高ランクの星5、および大規模生産施設では国内初となる『ZEB』の認証を取得しています。
一方、建築物省エネ法において、工場のZEB評価は、事務所等用途部分および工場等用途部分の倉庫や駐車場の照明設備のみが対象であることから、空調・換気負荷が大きい生産施設の場合、ZEBでは適正にエネルギー評価がされていないのが実情です。そこで、本建物はゼロ・エネルギーファクトリーを目指すために、生産エリアの空調、換気、照明も含めた評価指標「ZEF」を構築・評価しました。さらにエネルギー消費量の大部分を占める生産エリアは、生産の稼働状況と連動した照明・空調・換気の最適自動制御や機械学習を用いた熱源・空調の最適運転制御(T-Factory Next Type3)、エネルギーの見える化とクラウドを用いたエネルギーサポート(T-Green Cloud BEMS)等を採用しています。
結果として、基準値(既存実績値)から75%のエネルギー削減を行い、計画値としてNearly ZEFとなっています。運用段階のエネルギー削減に寄与するZEF以外にも、CO2排出量をライフサイクルにわたり削減するために、更なる太陽光発電設備の増設や再エネ電源の購入を検討しており、それらの導入効果を見える化し、今後のカーボンマイナスへの方針を立案しているところです。

担当

担当
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
照明 LightMoment
グラフィックデザイン マルヤマデザイン
コンピテーショナルデザイン 髙木秀太事務所
大成建設担当者
建築設計 古市理、上田恭平、石川真吾、熊谷新太郎
構造設計 島村高平、柴田宜伸、宮地あゆみ、御所園武、梅森浩
設備設計 鈴木真吾、信藤邦太
電気設計 鈴木真吾、近森真洋

受賞

2023年 照明施設賞

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