WORKS 2024

TAISEI SQUARE HANOI

TAISEI SQUARE HANOI

  • 北側外観

    北側外観:オフィスらしいシャープでのびやかな外観

  • 低層部外装

    低層部外装:PC外壁の縦格子が整然と並ぶ、陰影のある外装。掘りの深いスリットで高層部と明確に分節

  • 高層部外装

    高層部外装:ガラスの反射率を高めに設定し、空や街の光を全体に映り込ませ、時間や天候で表情を変える。
    庇は方立ごとに目地を入れ繊細でシャープな見え方とした

  • エントランスホール

    エントランスホール:高さ8.5mの開放的なロビー。直天として3階床PCスラブを露出

  • 基準階オフィス

    基準階オフィス:12.8mロングスパン。庇と垂れ壁、Low-Eペアガラスの外装で、ハノイの強い日射を遮蔽しつつ公園の景色を取り込む

  • 3階ビナタオフィス受付

    3階ビナタオフィス受付:木製スクリーンは大成ロゴ断面の木材を直交させて組んだ、ベトナムの職人による繊細な手仕事によるもの

  • 3階ビナタオフィスABWエリア

    3階ビナタオフィスABWエリア:海外初採用の「T-Light® Blind」が太陽光を室内奥まで届ける。柱はラタン材で仕上げ、グラデーション状に色合いを変化させた

  • 3階ビナタオフィスカフェスペース

    3階ビナタオフィスカフェスペース:システム天井のフレームをそのまま活用した、ラタン製の天井パネルがくつろいだ雰囲気を作る。木ルーバーは大成ロゴ断面

  • 3階ビナタオフィスゲストルーム

    3階ビナタオフィスゲストルーム:タマリンド無垢材で製作したテーブルにも、大成ロゴ型くさびを使用。固定席以外は全てサーカディアン照明を導入

用途
事務所、店舗、駐車駐輪場
所在地
ベトナム社会主義共和国ハノイ市
延床面積
45,507.25m2
階数
地下4階、地上20階

建築設計コンセプト

ベトナムでジャパンクオリティを追求した環境配慮型オフィスビル

ハノイ都心部の広大な公園に面した、大成建設グループの開発・設計・施工・運営によるハイグレードオフィスビルです。無柱空間やOAフロアなどの建築仕様だけでなく、空調、ELV、トイレなどの設備も含め、日本品質の快適なオフィスをベトナムで実現しました。当社国際開発事業のフラッグシップとして位置付けられたこのオフィスビルが、ベトナムにおける新しいスタンダードとなり、大成ブランドの地位向上とオフィス環境の改善に寄与できるものと考えます。

以下建築における取組みを紹介します。

【環境認証】

・水平庇+垂れ壁+Low-Eペアガラスの外装をはじめとした環境性能や居住性への様々な配慮により、ビル全体でLEED認証のシルバーを取得
・3階ワンフロアを占める当社現法ビナタインターナショナルの本社オフィスでは、環境性能・ウェルネス・ABWに優れた先進的なオフィス環境を整備。ベトナムの環境認証LOTUSの最高ランク・プラチナを取得

【外装】

(低層部)
・東面に対峙する高架高速道路の存在感を考慮して、PC外壁の縦格子が整然と並ぶ、質実剛健で力強さを持った外装
・隣接する1期棟との調和を意識したアースカラーの色調、ジョリパットによる凹凸のある素材感の仕上げとすることで、周辺と一体感のある街並みを創出

(高層部)
・ベトナムの厳しい環境条件(光、熱、空気、騒音)から内部空間を守りつつ、眼下に広がる公園の景色を取り込む、水平庇+垂れ壁+Low-Eペアガラスの組み合わせによる外装
・4面に連続する各層の水平庇を方立ごとにあえて分節することで、周辺に立ち並ぶ高層マンションの外観とは対照的な、オフィスらしい伸びやかなスケール感と繊細さを併せ持った外装
・ガラスの反射率をやや高めに設定し、各階ブラインドの開閉による外観のムラを抑えつつ、空模様や街の光を全体に映り込ませ、時間や季節によって見え方が変わるダイナミックな外観

【インテリア】

(エントランス・共用部)
・飾りを付け足していくのではなく、意匠、構造、設備のコーディネーション、丁寧な色合わせや木目や石目の選定、ディテールの詰めによって、余計なものを削っていく、引き算のデザイン
・騒々しい周りの環境とは対照的な、静謐で端正な落ち着きのあるインテリアを、明るいモノトーン調と木目調、質感のある素材感の選定で実現
・エントランスホールに設置する家具デザインや、各階ELVホールに展示するアートワークの選定

(ビナタ本社オフィス内装)
・大成建設のロゴマークを建築化して「人がいきいきとするオフィスを創造する」をコンセプトに、大成ロゴを構成する3つの要素をそれぞれ建築に置き換え
 1.青い3本の垂直線/優れた技術:ベトナムの手仕事の繊細さを活かし、この3本線の断面形状の木材を格子状に組んだスクリーンをロビーや受付カウンターに使用。繊細で抜け感のある空間を創出
 2.オレンジ色の丸/明るい未来(太陽):当社開発技術「T-Light® Blind」を海外で初採用、オフィスの奥まで太陽光を取り込むことが可能。またサーカディアン照明を導入し、太陽のリズムを内部空間に取入れ
 3.緑の水平線/豊かな自然:ラタンと木格子、熱帯樹の無垢材による、軽やかで涼しげな亜熱帯の木質空間を創出。固定席周辺も含めてオフィスの至る所に緑を配置し、潤いの感じられる環境を提供
・各所に打合せスペース、リフレッシュコーナー、カフェテリア、ハイカウンターなどを設け、ABW・ウェルネスを考慮したレイアウトを実現

【ランドスケープ】

4面とも接道する敷地において、それぞれの通りの性格・環境に適した植栽計画
・東側は歩道沿いに整然と並ぶ並木によって、ビルの前景となるよう道路沿いを修景
・北側は1期棟と連続した並木道を形成するよう高木の樹種を揃え、西側は壁面緑化や様々な花が咲く樹木の使用による、変化に富んだヒューマンスケールのランドスケープ
・4面を通して、夜間は植栽をライトアップし、建築の外観照明によって、暗がりとなっていた周りの街並みに明かりを灯す

構造設計コンセプト

ジャパンクオリティを趣旨とした建築・設備計画と合致したベトナムにおける合理的な構造架構計画

日本のオフィスビルの快適性をベトナムでも提供できるように、以下構造の取組みを紹介します。

【フレキシビリティの高い12.8mの開放性に優れた無柱空間の実現】

(課題)
ベトナムの中高層建物においては、在来RC造におけるロングスパン採用は一般的ではなく、鉄骨造も工事費が割高となりあまり採用されないのが実情です。また、オフィス空間はレイアウトのフレキシビリティを高めるために、12.8mの無柱空間かつ天井内は設備空間を十分確保するために梁型のない構造架構計画の提案が必要でした。

(解決策)
構造の梁配置を外周と内壁上部に限定し、PC鋼線を用いたプレテンション形式のプレストレストプレキャスト中空スラブ(ホロコアスラブ)を用いることで、12.8mのロングスパンをスラブ厚360mmで実現できました。また、中空スラブとすることで、揚重クレーンの性能制限においても施工計画を実現できました。

【オフィスの顔となる低層外装デザインの挑戦】

(課題)
低層部外装は、繊細な縦フィンを4周に渡って整然と並べ、日本建築の縦格子を想起させる端正なデザインとしている。縦フィンは幅90~138mm、約1.3mの一定間隔で計画しており、この細幅を施工計画含めていかに実現させるかが課題でした。

(解決策)
外壁を幅約2.5m、高さ約5.3mを1ユニットとしたプレキャスト外壁板とし、細い縦フィンには7mm径のPC鋼線を4~8本設置し緊張力を導入することで、施工時および設計外力で発生する応力に対してひび割れを抑制する構造計画としました。

【地下4層を限られた階高とスペースで合理的に施工可能な構造計画】

(課題)
地下計画は、地下4層分全てを駐輪・駐車場としてバイクのみでも1,600台以上駐輪できる計画とすることで、オフィスワーカーがストレスなく通勤できるよう配慮しました。元々地下2層で計画されていたため、限られた階高の中で構造計画することが求められました。また、できる限り駐輪・駐車スペースを確保するために、仮設計画を含めた合理的な地下工法を採用する必要がありました。

(解決策)
地下4階を合理的に施工するために、逆打ち工法(地下のみ先行)とD-WALL(地中連層壁)を有効に活用することで、工期短縮および安価な地下工事を実現しました。地下掘削中は構芯柱(H型鋼)を杭と一体化することにより、地下の構造躯体を構芯柱で支持しながら施工を進める計画としました。また、地下外周壁は、D-WALLを採用することで、3つの機能(山留壁、地下外壁、支持杭)を一体化させた合理的な地下工法とし、狭い敷地の中でも最大限の地下駐輪・駐車スペースを確保することに貢献することができました。地下一般階は階高3.1mという制限の中、コストを極力抑えつつ、梁型をなくすことで階高をできる限り抑えることが可能なフラットスラブ形式を採用しました。

設備設計コンセプト

安全・快適・省エネを実現する日本品質の要素技術

ベトナムで日本品質の安全で快適なオフィスを実現するため、以下設備の取組みを紹介します。

【日本品質の安全性】

・全館の空調機器にナノイーを搭載し室内の空気質を改善し感染症を予防
・水質改善のためにフィルター型浄水設備を屋上に設置し、日本品質の水質の上水を全館に提供
・ELVに除菌脱臭効果のあるプラズマクラスターイオン発生装置とタッチレスボタンを搭載
・基準階の大便器全てに温水洗浄機(ウォシュレット)を搭載、また感染症対策として水栓・小便器はすべてセンサー式を採用

【日本品質の快適性】

・不快なELV待ちを防ぐ、日本のELV交通計算推奨値をクリアした十分なELV台数と仕様
・トイレの混雑を抑える、余裕のある衛生器具数(空気調和・衛生工学会規格サービスレベル1以上)

【日本品質の環境配慮・省エネ】

・海外初となる「T-Green® Multi Solar(ビル外装を有効活用し、太陽光を効率的に発電)」と「T-Light® Blind(特殊なスラットで太陽高度の変化に対応し、室内の奥まった場所に良好な光環境を提供)」の採用
・高効率空調機器の採用
・TOTO製の節水型トイレ器具の採用
・P-AIMSおよびBMSにて各所の空調機、換気、照明および各所電力量、水量の監視および制御が可能
・オフィス部分の換気に全熱交換器を採用
・全館LED照明の採用
・サーカディアン照明(時間帯に応じて光の色温度や照度を調整し、自然な体内リズムをサポートする照明方法)を3階ビナタオフィスに採用

担当

設計・監理:基本設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
実施設計 ビナタインターナショナル(ベトナム現地法人)
大成建設担当者
建築設計 加藤誠、木野史朗、高寒
構造設計 太田雅昭、土本耕司、グエンズイ タン
設備設計 高木健、三村渉
電気設計 高木健、近森真洋

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