WORKS 2024

カクヒログループスーパーアリーナ/青森市総合体育館

Kakuhiro Group Super Arena / Aomori City General Gymnasium

  • 東側外観(夜景)

    東側外観(夜景):中央は半屋外空間「ヨリドマ」、右は「メインアリーナ」、左は「サブアリーナ」

  • 南西側側外観

    南西側側外観:グランドレベルを囲う水平開口は公園とアリーナを接続し、ボリュームに浮遊感を与える

  • 半屋外イベントスペース「ヨリドマ」

    半屋外イベントスペース「ヨリドマ」:青森の厳冬期においても屋外的利用の可能な空間

  • 南北をつなぐ雁木空間「コミセ」

    南北をつなぐ雁木空間「コミセ」:地産木材を編むように天井を構成し、風雪から来訪者を守る

  • 西側2階デッキ外観

    西側2階デッキ外観:青森に古くから伝わる防雪塀「かっちょ」を外装設えとして採用し、半屋外空間を守る
    (左:「かっちょ」閉鎖時、右:「かっちょ」開放時)

  • メインアリーナ

    メインアリーナ:青森県産木材で囲われた温もりのある内装

  • 大開口

    「ヨリドマ」と「メインアリーナ」をつなぐ大開口

  • キッズルーム

    キッズルーム:東北圏最大規模を誇る

  • 東側外観(鳥瞰)

    東側外観(鳥瞰):都市公園「青い森セントラルパーク」と一体となった、緑に囲まれたスポーツコンプレックス

  • MOVIE

用途
体育館、スポーツ練習場
所在地
青森県青森市
延床面積
12,063.17m2(青森市総合体育館)
階数
地上3階

建築設計コンセプト

健康を増進し、地域住民の交流・防災の核となる環境型スポーツ施設

世界⼀の豪雪都市・⻘森市の中央に位置する⻘い森セントラルパークと⼀体化した複合型スポーツ施設です。7つのスポーツボックスを⻘森の伝統的雁⽊空間「コミセ」にヒントを得たギャラリーでつなぎ、その結節点に地域の交流空間「ヨリドマ」を設けました。
施設の主要な機能に会する「ヨリドマ」は、⾵が通り抜ける⽴体的な孔となっていて、隣接する2つのアリーナの可動建具を開放すると、⼈⼯芝の広場につながる街区規模の⼀体的空間が現れます。昔の⽥の字プランの⺠家のように空間は⾃由に形を変え、多彩な活動の受け⽫になります。また「ヨリドマ」の南⻄部には、季節⾵から半屋外空間を守るため、地域の伝統的な⼯作物である可動式の防⾵防雪柵「かっちょ」を採り⼊れ、地元の叡智を受け継ぎ、雪と共⽣する環境共⽣型のスポーツコンプレックスの在り⽅を模索しました。
外⽪には⻘森産のホタテ殻を混ぜ込み、「ヨリドマ」と「コミセ」のフレームには、地元の⽊材を⽤いて「りんごかご」を想起させるパターンを展開しました。⽊材を多⽤した⽊籠のアリーナは⽊の優しい⾹りに包まれ、コネクトホールと名付けたホワイエには、⼥性初のねぶた師・北村⿇⼦氏が製作した巨⼤なリンゴのねぶたが浮かびます。
⻘森の縄⽂⽂化のぬくもりが漂う、ヒューマンで⾵通しのよい現代の「かご」が⽣まれました。

構造設計コンセプト

様々な空間を一体化する構造計画と「ヨリドマ」の木・鋼ハイブリッド部材

高さの異なる4つの大屋根と半屋外空間「ヨリドマ」から構成される本建物において、垂直積雪量180cmに対する耐雪性と公共施設として高い耐震性の確保が構造計画上の課題でした。
屋根面の地震力伝達および止水等の納まり上の観点からExp.Jは設けず、すべての空間を一体の構造としました。観客席を有するメインアリーナの1階はRC造として剛性を確保しつつ振動に対して配慮し、その他の架構はブレースをバランスよく配置することで剛性と耐力を確保しS造で計画しました。
メインアリーナの屋根架構は、2つの平面トラスを組み合わせたボックストラスとし、Y字の方杖柱を設けてトラススパンを短くすることで、積雪時の応力や変形に対して配慮しました。
2つのアリーナをつなぐ「ヨリドマ」は、トラス下弦材を斜交配置した木・鋼ハイブリッド部材で構成することで地震時の水平力を伝達させ、空間の一体化に対して構造的役割を担いつつ、木に覆われた特徴的な「ヨリドマ」空間を演出しています。下弦材にはBT形鋼を用い、ウェブの両面から集成材で挟み込んだ木・鋼ハイブリッド部材とし、圧縮耐力および軸剛性を向上させています。片側面に鋼板を複数のビスで一体化させた集成材を、BT形鋼のウェブに高力ボルトで接合することで補剛効果を持たせています。施工性のよいシンプルなディテールを採用しました。

設備設計コンセプト

建築計画と融合した防災・環境配慮型の多用途対応設備計画

市民利用からBリーグをはじめ様々なスポーツイベントや大規模イベントが開催される施設であり、仕様形体に応じた照明・空調制御や、負荷変動に応じた給水備蓄量・空調換気モード設定などが任意かつ容易に対応可能な設備計画としました。
また指定避難所としての機能を満たすべく、非常用発電機、屋外マンホールトイレ、防災対応型地流しやヨリドマおよびエントランスへの防災用アウトレット(給水、コンセント、ガス)の設置の他、大空間における災害時の機械換気確保、自然換気用開口の確保などを行いました。
本施設の中心となる「ヨリドマ」は、半屋外空間とすることで空調換気を不要として大幅なLCC削減を図るだけでなく、有孔板を組み合わせることにより風を遮蔽しつつ、消防上有効な開口を確保することで最低限の消火設備とするなど、建築計画と設備計画の融合を計りました。

ランドスケープコンセプト

スポーツ施設と都市公園が一体となったスポーツコンプレックス

本アリーナが整備された青い森セントラルパークの周辺環境は、南側は道路を挟んで閑静な住宅街に隣接し、東側には八甲田山など連なる山々への眺望が広がります。
本プロジェクトは、Park-PFIを活用して一体的に整備されたアリーナと都市公園で、アリーナのヨリドマ空間は東の山並みに大きく開かれた市民活動の拠点であり、一方サブアリーナやキッズルームは南側の公園に連続して開かれ、スポーツや遊びを室内でも屋外でも楽しめます。
南側の公園は、アンジュレーションのある開放的な芝生広場となっています。住宅地とのバッファとなる既存樹林を活かしながら、新植樹木をまとめて植えることで緑のボリューム感を形成し、市民が緑を楽しみながら自由にスポーツや散策ができる公園となっています。

担当

設計・監理 隈・大成・川島設計共同企業体
大成建設担当者
建築設計 川野久雄、藤本鉄平、堀川斉之、高岩遊
構造設計 島村高平、一色裕二、管野貴孔、柴田宜伸、矢ヶ崎拓人
設備設計 龍英夫、鈴木庸平、今田茉莉奈
電気設計 箭内伸司、藤間遼平
ランドスケープ 蕪木伸一、山崎ひかり、佐野剛仙

受賞

2025年 第17回 ふるさとあおもり景観賞 公共建築物部門 最優秀賞

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