- 用途
- 工場
- 所在地
- 岩手県遠野市
- 延床面積
- 79,250.9m2
- 階数
- 地上3階
建築設計コンセプト
「最先端の森」環境共生とBCPに配慮した日本初のサプライヤーパーク
これからの時代にふさわしい環境共生型生産拠点のプロトタイプとして、各サプライヤーの生産拠点と従業員の交流拠点を一つ屋根の下に集約した日本初のサプライヤーパークを計画しました。
本計画ではサプライヤー同士の競争力を促進させる従来の分散型サプライヤービレッジではなく、一つ屋根の下にサプライヤーを集めて共成する形式を採用しており、「サプライヤーと共に会社を成長させたい」という顧客の想いを具現化した、効率化・合理化だけでない新しい価値の創出を目的としています。
また、建物を統合しコンパクト化することで環境負荷を大幅低減するだけでなく、製造プロセスを集約することで災害時もサプライチェーンを守るBCPを可能にしています。
自然とテクノロジーの共進化/SMC×遠野の好循環
自然豊かな遠野にサプライヤーパークを根付かせるため、効率の最大化と物流の環境負荷低減を図る生産拠点「工場棟」と遠野の町の間に、遠野の山並みに溶け込む象徴的な交流拠点「共用棟」を配置する計画としました。
「共用棟」は、遠野の山並みに馴染ませた流線型の屋根を遠野産アカマツのダブルアーチが支える形態としました。遠野ならではの山並みに呼応する外観デザイン、森の中を散策する抑揚感ある空間体験、木アーチの構造最適化の3つをコンピューテーショナルにデザインしており、遠野らしさとテクノロジーを融合させています。柱の両側のダブルアーチが積雪荷重を軸力に変換し、柱を補強することで開放的なアトリウム空間を実現しました。
また、木アーチには遠野産アカマツを130m3使用しており、ペーパーレス化に伴い消費量が減少したアカマツの森林循環に加え、合計70tの二酸化炭素を固着させたことにより脱炭素に貢献しています。
「工場棟」は、入居するサプライヤーが使いやすい整形な計画としました。各サプライヤーの生産区画に、上下階を搬送できる垂直搬送機と中間階にAGV設備を設置することで、搬送設備の自動化と効率的な物流動線を構築し、高い生産能力を実現しました。
また、「共用棟」でいなした西からの卓越風を、「工場棟」の廊下から光階段に取り込んで自然通風を促進するため、CFD解析により通風促進効果を最大化できる屋根形状とし、工場内に居ながらも遠野の風が感じられる計画としました。
外構は、造成によって失われてしまった森を再生する緑化計画としました。樹種ごとの特性や種の飛散をシミュレーションし、森の遷移を可視化することで、苗木の配置の高効率化を図り、100年かけて再生する新たな遠野の森を計画しました。
レジリエントなBCP
一つ屋根の下にサプライヤーを集める「サプライヤーパーク」とすることで、災害時にもサプライチェーンを維持できるBCPを実現しています。
「共用棟」は、自然災害時には従業員や地域の方々の避難場所になることを想定しています。備蓄倉庫や非常用発電機を備えると共に、重要度係数を1.25倍に設定し地震時にも安心して避難ができる計画としました。
「工場棟」は、地震時の変形を抑えた耐震性の高い構造とすると共に、上階ではロングスパンの計画とすることで、生産性を向上させながら、災害時にもサプライチェーンを維持するBCPを実現しています。
働きがい、生きがいの創出
「共用棟」は、東西に約180m広がる雄大なアトリウム空間に、遠野の自然をモチーフとした形態と遠野産アカマツや地場産の大理石など地域の材料を使うことで、自然豊かな遠野を再現し、従業員の働きがいや生きがいを創出する交流拠点を計画しました。
「工場棟」は、東西・南北方向に共用通路(スパイン)を計画し、動線やゾーニングを明確化するとともに、スパイン交差部では各サプライヤーの製造環境を見学できる仕組みを計画しました。技術力発信の拠点を設けることにより、サプライヤー同士の技術研鑽を促しています。
構造設計コンセプト
木-鉄ハイブリッド構造による曲面屋根架構
「共用棟」の構造形式は、鉄骨造による純ラーメン架構とし、平面計画の自由度を確保しました。建築空間の目玉となる2階の広大なアトリウムでは、鉄骨と木材を組み合わせたハイブリッド構造を採用し、木の温かみを感じることのできる空間を目指しました。屋根材を直接受ける梁には鉄骨を使用し、鉄骨梁を下から木集成材のアーチ構造により支持することで、曲げに強い鉄骨と圧縮に強い木材、それぞれの長所を生かした適材適所の構造としています。建物背面側の1フレームを頑強な柱・梁によるラーメン構造として地震力の大部分を負担させることで、アトリウム部の屋根架構はスレンダーな部材とした開放的な空間を実現しました。屋根が曲面形状であるためすべての構面でスパン、アーチ形状が異なりますが、接合部に構造用ピンを用いることであらゆる形状に対して共通のディテールとなるよう配慮しました。
「工場棟」の構造形式は、座屈拘束ブレースを用いたブレース付きラーメン構造とし、地震時の変形を抑えた耐震性能の高い構造としています。1階の機械加工場範囲については土間コンクリートとして荷重を地盤に直接伝達させ、上階についてはロングスパン小梁を剛接合とした床組とすることで、より合理的な構造計画としています。
基礎構造は、荷重の比較的小さな「共用棟」では直接基礎(+地盤改良)とし、荷重の大きな工場棟では杭基礎(SC杭、PHC杭)を採用しました。
設備設計コンセプト
大型テナント工場におけるZEB Orientedの実現
サプライヤー毎の設備要求に対応し、省エネ技術を積極的に導入することで大型テナント工場におけるZEB Orientedを達成しました。また、1階機械加工場には危険物用1号消火栓を採用し、サプライヤー毎の危険物取り扱いに配慮しています。さらに、電力・上水・圧縮空気・空調熱量をサプライヤー毎に計量できる計画としています。
天井が高い「共用棟」のアトリウムの一部に、床からの放射冷暖房と空調機による対流式空調を併用した空調方式を採用することで、快適性と省エネ性に優れた空間を実現しています。
「工場棟」の屋根には約2MWの太陽光発電パネルの設置が可能であり、将来の高圧連系に備えて屋上に必要なスペースを確保しています。
積雪および寒冷地対応として、屋外設置機器の基礎高さを600mm以上とし、防雪フードを計画しました。最低外気温を踏まえ、凍結防止制御の導入、屋外露出配管への凍結防止ヒーターの設置、受水槽の屋内設置、不凍水栓柱の採用を実施しいます。
BCP対応として、上水途絶時に備え受水槽容量を72時間分確保しました。非常用発電機は、災害対策本部および一時滞在スペースとなるエリアの空調・換気・給排水設備を72時間運転できる容量とする計画としました。
意匠性に最大限配慮し、「共用棟」は背面から、「工場棟」は屋上から給排気を行っています。また、「共用棟」のアトリウムでは、梁上に上向きLED間接照明を配置し、木の特徴を柔らかな間接光で引き立てる演出としました。さらに、時間帯およびエリア毎に調光調色シーンを設定し、省エネでありながら遠野の原風景を損なわない親和性の高い光環境を実現しています。
担当
| 設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
|---|---|
| 共用棟屋根架構共同設計 | 山田憲明構造設計事務所 |
| プログラミング | 髙木秀太事務所 |
| 照明デザイン | 株式会社ライトモーメント |
| 外構デザイン | 有限会社ソラ・アソシエイツ |
| サインデザイン | 6D |
| ファブリックデザイン | VAN HONGO |
| 大成建設担当者 | |
| 建築設計 | (全体統括)横溝成人、古市理 (共用棟)金子由里子、太田英和、細川奈未、加藤賢一、倉持翔太、麻田北斗(前期) (工場棟)鬼頭朋宏、田淵隆一 |
| 構造設計 | (共用棟)松土智史、森拓也 (工場棟)常川重樹、鈴木直人 |
| 設備設計 | 林寛和、瀧澤幸大(前期)、川口朱理 |
| 電気設計 | 藤田隆史 |
| 外構 | 平賀順也 |
| エンジニアリング | 佃修、安藤真佑佳、征矢野暁 |