- 用途
- 研究所
- 所在地
- 埼玉県幸手市
- 延床面積
- 3,867.05m2
- 階数
- 地上4階、塔屋1階
建築設計コンセプト
ゼロカーボンビルをめざした最先端の環境建築
脱炭素社会・循環型社会・自然共生社会の3つの社会を実現するべく、大成建設グループの最新技術を結集させた次世代技術開発の重要拠点として整備しました。
脱炭素社会の実現に向けて、施設の中核となる「管理研究棟」の建設では、当社が開発したゼロカーボンビルの評価指標である「T-ZCB」を活用して、調達(建設資材製造・入手)、 施工、運用(建物の運用および修繕・解体)まで含めた建物のライフサイクル全体で発生するCO2収支をゼロにするゼロカーボンビルを目指しています。
循環型社会の実現に向けて、当社が慶應義塾大学とともに提唱するヴォルテックス・エコノミーの実践として廃棄素材を再利用した建材の採用などを積極的に行っています。
自然共生社会の実現に向けて、建設前後で動植物や自然環境に対する定量的な評価を行い、幸手ならではの緑地や水辺空間の整備によってネイチャーポジティブに寄与する計画としています。
3つの社会の実現を通して、大成建設グループの理念である「人がいきいきとする環境を創造する」ことを目指しています。
脱炭素イノベーションに挑む研究拠点
本施設では、主に大成ロテックの研究員が外構、舗装材に関する研究開発を行います。
ゼロカーボンビルを目指した施設の核となる「管理研究棟」や設備中枢となる「インフラステーション」の他、脱炭素・資源循環に貢献する「アスファルトの製造ラボ」や「コンクリートの製造ラボ」が配置されます。
さらに舗装材の耐久性や環境性能を実証するための「道路床版のラボ」や研究所内で開発された舗装材の実証実験を行う120mにおよぶ屋外施設である「道のテストフィールド」も備えています。
敷地内には円形に「見学者回廊」を設置し、研究所全体を一望できる動線として整備され、来訪者が施設の先端技術や環境配慮の取り組みを体感することができます。
「ショーパーキング」では、駐車場機能の他に舗装技術の展示空間としての役割を担っています。舗装材には脱炭素アスファルト舗装・半たわみ性補装など多様な新素材が敷設され、実際の使用環境下での性能を体感できる構成となっています。
ゼロカーボンビルをめざした管理研究棟
「T-ZCB」では、計画建物のライフサイクルでのCO2排出量を、用途、規模、構造種別等から想定した従来建築物のCO2排出量に対する削減度に応じてレベルを定義しています。(40%削減:ZCB-Oriented、50%削減:ZCB-Ready、75%削減:Nearly-ZCB、100%削減:Net-ZCB)
各段階でのCO2排出量の削減状況を分かり易く体系化して評価することで、目指すべき建物の目標値を設定することができます。
調達段階では、構造躯体の木造化やCO2原単位の少ない建材を採用、天井の直天化などの軽量化などによりCO2排出量を削減しています。
施工段階では、燃料由来CO2、電気由来のCO2削減を行うことでゼロカーボンコンストラクションを達成しています。
運用段階では、従来建築物ではライフサイクルの中でも最も多くのCO2を排出しますが、省エネ設備の採用や太陽光発電パネルによる創エネを行っています。本建物では約278kw分の太陽光発電パネルを設置しており、Net ZEBも達成しています。(Net ZEB対象分は173kW)
修繕段階では、建物の長寿命化やメンテナンス回数の少ない材料によりCO2排出量を削減しています。
解体段階では、乾式工法や解体しやすい接合方法を設計段階から計画することでCO2排出量を削減しています。
以上の取り組みを行うことで、本計画における研究管理棟ではNet-ZCBを目指しています。
構造設計コンセプト
重層する役割をもった木による構造架構
「管理研究棟」は、日本初のゼロカーボンビルを目指し、調達段階のCO2排出量削減を図りました。
1~3階をRC造、上部2層を木造とする混構造とし、材料選定により環境負荷を低減しています。RC造の1~3階は、「T-eConcrete ®※1」による耐震壁付ラーメン構造とし、屋上鉄骨部に「T-ニアゼロスチール※2」を採用してCO2排出を抑制しています。
木造の3~4階は、回廊型プランに合わせ、以下の4要素で意匠と構造を両立しています。
① CLT耐震フレーム
準防火地域に対応しつつ、埼玉県産材を見せる耐火構造を採用
長期荷重を受けるフレームと短期荷重を受ける耐震フレームを分離
CLT間柱と集成材梁で構成し、φ52鋼棒ダボやクロスビス接合の性能を実験で確認
② サクラファサード
権現堂桜をモチーフとした外周架構
二層フレームで軸力伝達を明確化し、意匠・構造・環境で最適化
③ 「T-WOOD SSP Floor」
中央14.4mスパンに大スパン木質床ユニットを採用し、無柱空間を実現
CLTと2×4材によるストレストスキンパネル構造で、実大試験により性能確認済み
④ レシプロカル屋根
14.4m角の屋根を相互支持構造とし、軽量・高剛性を両立
耐火仕様に「T-WOOD TAIKA軽」を採用
その他にも、吹き抜け階段、外部ファサード等構造的にもデザインされた建物になるように設計を行いました。
「道路床版のラボ」は、外壁をRC耐震壁構造、上部を鉄骨造とし、高耐震性と開放的空間を両立しました。
本体が地震力を全て負担することで、見学デッキの軽快な架構を実現しました。
「見学者回廊」は、真円形状とケーブル緊張を活かした逆フィンクトラス構造を採用しました。
彫刻的柱は3D配筋解析で安全性を確認しました。
※1 T-eConcrete ®:排気ガスや大気中のCO2とカルシウムを反応させて製造した炭酸カルシウムなどのカーボンリサイクル製品を使用したコンクリート(詳細https://www.taisei.co.jp/ss/tech/C0262.html))
設備設計コンセプト
敷地全体の研究環境を支えながら、ゼロカーボンビル達成に向けたCO2排出量管理を実現する設備計画
「管理研究棟」のライフサイクルカーボンマイナスを達成するための脱炭素技術の導入および、それを確実に達成するためのエネルギーマネジメント手法の構築を行いました。
設備機器のエンボディドカーボン削減として、「T-ニアゼロスチール」を筐体に使用したキュービクル、盤類、地金製造に再エネを使用したアルミ導体ケーブル、組立工場における再エネ活用により製造時のCO2排出量を削減したパッケージエアコン、再生フロンの充填などの技術を採用しました。
また、オペレーショナルカーボンの削減手法として、各種省エネ技術のほかに、大容量の太陽光発電と蓄電池を組み合わせ、需給一体型EMSによる運用を行うことで天候や負荷変動の影響を極力抑え、再生可能エネルギーを最大限活用できるシステムとしました。
ランドスケープコンセプト
水と緑がつくるのびやかな自然と大成グループ技術が融合するミニ・ネイチャーポジティブタウン
幸手は川の氾濫と地形変化を繰り返し、のびやかな水田や湿地、豊かな屋敷林や河畔林の緑を育んできました。そうした幸手の原風景を敷地内に再構成し、多様な自然環境を育むことで様々な生き物が訪れる場をつくり、自然と最先端の研究施設を融合させることで、人と自然が共生する都市モデルを目指しました。
水辺や緑地には、自然が持つ多様な力を活用しています。湿地は、緑の創出と雨水の貯留・浸透を同時に進める 「T‑GI rain garden」 を導入することで都市の減災に寄与する場となり、水辺は、自然由来の素材を用いて水質を浄化する 「アクアトープ」 を活用することで、生き物にやさしい澄んだ水環境を整えています。さらに、堤防・水塚を模した丘の草地やインフラステーションの壁面緑化には、植物の成長力を活かす工法を採用し、豊かな草地づくりを目指しました。また、舗装や緑化資材には間伐材や廃瓦などを再利用した サーキュラー建材 を取り入れています。土地独自の自然を受け継ぎ、その力を活かすことで、都市の暮らしを豊かにし、人々と自然がともに豊かに過ごせる風景を目指しました。
担当
| 設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
|---|---|
| コンピューテーショナルデザイン | 髙木秀太事務所 |
| サインデザイン | 6D |
| 環境解析 | スタジオノラ |
| 照明デザイン | 株式会社ライトモーメント |
| 大成建設担当者 | |
| 建築 | 渡邉智介、古市理、鬼頭朋宏、敦賀谷俊、丸山智也、塩田佳織、廣木千咲子 |
| 構造 | 藤永直樹、島村高平、矢田貝健、要知市郎、関根夕貴、御所園武、中村咲瑛子、板垣尚子 |
| 設備 | 砂賀浩之、光本皓平 |
| 電気 | 砂賀浩之、林幸広 |
| ランドスケープ | 蕪木伸一、西島知明、中村慶人、山崎ひかり |
受賞
| 2025年 | 日本建築学会 建築デザイン発表会 優秀発表 |
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