- 用途
- 事務所、研究施設
- 所在地
- 神奈川県川崎市幸区
- 延床面積
- 73,540.54m2
- 階数
- 地下1階、地上13階
建築設計コンセプト
既存環境との共生と開かれた研究所
敷地である東芝総合研究所は、多摩川と連続した公園と国道に面し、住宅地に囲まれています。7.3haの敷地に実験棟が点在し、一部の実験棟と既存研究棟の過半を解体し新たな研究棟を建設するローリング計画です。
研究者は既存実験棟と行き来しながら日々研究を進めています。そのため、「新しい建屋の建設」ではなく、既存建屋を含めた「新たな環境」のなかで、様々な人と出会い、集いオープンに議論できる場を目指しました。視線や光・風が通り、相互に存在を感じ、刺激し合う空間を志向しました。
既存研究棟の減築による、思考の余白を生み出す豊かな外部空間の創出
既存研究棟を減築し、新棟の間に生まれたスペースを中庭とし、既存棟=過去、中庭=現在、新棟=未来と捉え、既存研究棟の中庭・新棟側の減築によって外壁とした壁に大きな開口部を設け、「過去(既存棟)」から変わり続ける「現在(中庭)」と「未来(新棟)」のつながりを象徴させました。中庭「イノベーション・パレット ガーデン」は研究者や来場者がリフレッシュでき、アウターワークスペースとしても利用できる散策路と滞留空間が折り重なります。緑地を大幅に増やすことで敷地内外の環境の質を向上させ、心地よい研究開発の場をつくっています。多くの在来樹種や多摩川流域に自生している草花を選定しています。
他者の存在を感じ互いに共鳴するきっかけが散りばめられた偶発的な共創の場
「イノベーション・パレット ガーデン」から連続する南館・北館1・2階はエントランスホール・会議エリア・カフェテリアから構成されたこの総合研究所の最大の出会いの場です。この空間を構成する素材は単なる“もの”ではなく、「いま・ここ」にしか立ち会われない経験を支える条件であり、空間の現前性を担う基盤です。権威的な唯一性を付与するのではなく、公園のように開かれた場において、多様な研究者が自由に交わり、新たな知が生まれる環境を目指しました。
様々な人と出会い、集い、オープンに議論できるワークプレイス ― 垂直統合型から共創型の研究へ ―
執務スペースは、視線や光、風が通り、相互に存在を感じ、刺激し合う空間を志向しました。1フロア2850m2の専有部の中央にオープンな階段を設け、平面・立体的にも回遊性の高いものとしています。55m角の広い空間でも個人の居場所が認知できるよう、経済性と建築モジュールを考慮した柱スパン7.2m×10.8mに位置情報サインを設置し、ビーコンを活用した在籍管理システムでABWの研究所を実現しました。
社内外との共創によりオープンなイノベーションが生まれる場
最上階は、社内外の研究者が集い多様な使い方を可能にするオープンスペースとステージ状のエリアで構成され、可変性の高い什器が置かれた共創スペースとしています。併設した約500人の利用まで可能な講堂は、遮音性のあるガラスパーティションで構成しています。多方向から自然光が入る開放的な場所となり、人の活動がより顕在化することを目指しました。
構造設計コンセプト
安全で機能的な研究環境を支える構造計画
本計画では、研究活動を支える基盤として、安全性の確保と合理的な構造システムの構築を図り、継続利用可能な機能的な研究環境の実現を目指しました。
南館:高い安全性により研究活動を支える免震構造
南館は、研究活動を継続的に維持するための拠点として、高い安全性と機能性の確保を目的に免震構造を採用しました。免震装置は、地震時の設備・什器の機能低下や損傷を抑制し、研究活動の継続性を確保するため、積層ゴムと弾性すべり支承を組み合わせたハイブリッドTASS構法にオイルダンパーを併用した構成としています。
地上架構では執務空間の柔軟な利用に配慮してラーメン構造とし、あわせて建物の剛性向上を図るため、CFT柱を採用しました。
基礎は環境負荷低減の観点から、土工事における地盤掘削量の削減が可能なマットスラブを採用しました。さらに、マットスラブには高炉セメントB種を採用することでCO2排出量の削減を図っています。
北館:研究継続性を高める耐震計画と機能的な架構
北館は、研究施設の事業継続性の観点から、地震時の安全性を確保するとともに、執務空間の柔軟な利用に配慮した構造計画としています。建物の保有水平耐力は必要保有水平耐力の1.2倍を確保することで耐震性能の向上を図るとともに、地上架構はラーメン構造を採用し、柔軟な空間構成を実現しています。
北館から南館に接続する渡り廊下は約8mの片持ち架構とし、意匠性に配慮しながら変形を抑制するため、フィーレンディール架構を採用しました。開口部を確保しつつ剛性を高めることで、軽快な空間と必要な構造性能を両立した計画としています。
庇:中庭と一体となる軽快で合理的な架構
既存研究棟と新棟をつなぐ通路庇は、建物と中庭をつなぐ空間構成に配慮し、開放性と軽快さを備えた架構を採用しました。
庇の架構は、Φ139.8の鋼管柱2本からなる耐震組柱を道路側に配置し地震力の大部分を負担させ、中庭側の柱をΦ89.1の細柱を配して、開放的で軽快な空間を形成しています。また、柱位置を千鳥状にずらして屋根梁を斜めに配置することで、屋根面の梁がブレースとして機能する合理的な架構としました。
担当
| 設計 | 株式会社東芝一級建築士事務所、大成建設株式会社一級建築士事務所 |
|---|---|
| 設計(設備・電気) | 株式会社東芝一級建築士事務所 |
| 外構設計協力 | 株式会社アーキパートナーズ 加瀬泰郎、同会社高木秀太事務所 髙木秀太 |
| 大成建設担当者 | |
| 建築設計 | (通期)小林浩、﨏真介、坪沼一希、姉崎匠 (1期前半)川岡秀郎、西尾聡志 (1期後半)杉野宏樹 (2期基本設計)岡崎啓佑 |
| 構造設計 | 武谷政國、矢島龍人、三宅眞理子 |
| 法規 | 藤原稔、林広明 |