当社設計・施工作品の「古平町複合施設かなえーる」に適用した当社開発技術「躯体輻射冷暖房システム」が、2024年度日本建築学会北海道支部技術賞を受賞しました。(受賞名「寒冷地ZEBにおける躯体輻射冷暖房システムの開発と検証」)
日本建築学会北海道支部技術賞は、北海道における創造性豊かな建築・都市に関する技術の開発者、継承者等を表彰することにより、北海道における建築界の技術の向上に資するために設立された表彰制度です。
表彰の対象は、以下に示す技術等を開発、継承した個人、法人等となります。
・建築または都市の計画もしくは建設に関わる構造、材料、環境、設備、工法、手法、 プロセス等に関する技術(特許などに係るものにあっては、公開され利用が可能なものに限る)であって、北海道内で近年中に開発されたもの。
・北海道内において継続的な活動によって構築された技術、技能、プロセス等。
一般社団法人日本建築学会北海道支部:https://hokkaido.aij.or.jp/
躯体輻射冷暖房システム
本技術開発の背景
事務所ビルの建物全体エネルギー消費に占める空調エネルギーの割合は、一般的に5割程度ですが、暖房エネルギーの多い寒冷地においては6割以上になることもあり、寒冷地において空調エネルギーの削減はZEB化実現のための重要な要素となります。
また、室内環境の快適性を追求し、外皮負荷を削減するため、外断熱工法が採用されますが、特に冬季の長期休み明けはペリメータゾーンの快適性が懸念されます。
寒冷地におけるペリメータゾーンの快適性を解決しつつ、冬期でも高効率運転ができる地中熱ヒートポンプによる冷温水を使った壁・床・天井の躯体輻射冷暖房システムを開発し、「古平町複合施設かなえーる」に導入しました。
本技術を導入した建物概要
本施設は、築95年が経過した庁舎及び築50年の地域交流センターの建替事業により建設されました。庁舎と交流センターの機能、防災拠点機能を備えた複合施設であり、ZEBを必須としたデザインビルドによるプロポーザルコンペで出件され、基本計画段階で北海道の自治体で初のZEB Readyを2019年2月にBELS認証で取得しました(BEI=0.49)。竣工時のBEIは0.42で、再度BELS認証を2022年2月に取得しました。さらに、複合施設開設後の2022年5月~2024年4月までの2年間の運用実績で、計画時を上回る省エネ性能 Nearly ZEB相当を達成しました。
1年の半分近くが雪に覆われる厳しい寒さの地域のため、36m角の平面形状で断熱厚150mmのRC外断熱工法及び約30%の開口率で外皮からの熱ロスを小さくしました。また、地中熱ヒートポンプによる躯体輻射冷暖房システムやその他省エネルギー技術を組み合わせることで、大幅な省エネルギーを実現しました。



躯体輻射冷暖房の概要
寒冷地における暖房時の省エネルギーと快適性を両立させるため、本施設には地中熱ヒートポンプから供給される冷温水を床、天井、壁に埋設した配管に流すことで躯体輻射冷暖房システムを構築しました。埋設配管は汎用性を考え、施工性が良く、低コストである樹脂管としました。また、BEMSデータや実測温湿度データより分析し、躯体輻射冷暖房システムによる断熱性能、快適性、熱源システムの性能について効果を検証しました。
本施設運用2年目の躯体輻射冷暖房の有無と断熱材内温度の変化を比較したところ、躯体輻射冷暖なしの断熱材内側温度は、17~28℃の温度変動に対して、躯体輻射冷暖房ありでは21~28℃と温度変動が小さいことが分かりました。
また、本施設と同様に外断熱建物の「大成札幌ビル(2006年竣工)」と冬期(1月)の貫流熱量を比較すると、本施設の貫流熱量は大成札幌ビルに比べて21~35%削減できました。
このように、冬期の快適性を維持するため、寒冷地での断熱性能の向上効果を確認することができました。
技術概要
- 建築主
- 古平町
- 所在地
- 北海道古平郡古平町大字浜町50番地
- 用途
- 庁舎、集会所、図書館
- 構造
- 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造
- 階数
- 地上3階
- 敷地面積
- 8,861.57m2
- 建築面積
- 1,323.59m2
- 延床面積
- 3,887.03m2
- 工期
- 2020年4月 ~ 2022年2月
- 設計
- 大成建設株式会社一級建築士事務所
- 施工
- 大成建設株式会社札幌支店
大成建設担当者
- 設備設計
- 山本進
- 設備設計
- 熊谷智夫
- 設備設計
- 大木泰祐
- 建築設計
- 高橋章夫
- 建築設計
- 杉野宏樹
- 構造設計
- 小山智子