NEWS 2022.12

「木材の新接合法(T-WOOD SPACE Light)を活用した木質空間」が
グッドデザイン賞とウッドデザイン賞を受賞

  • 伝統と現代をつなぎ、京都らしさを体現するモチーフとして、伝統建築に見られる木組みによる意匠と、西陣織の経糸と緯糸でつむぐ工程を取り入れたデザイン

    伝統と現代をつなぎ、京都らしさを体現するモチーフとして、
    伝統建築に見られる木組みによる意匠と、西陣織の経糸と緯糸でつむぐ工程を取り入れたデザイン

  • 展示台・タブレットスタンドなどの什器も、本体と同じ材料・手法で作成。内部に満ちる木の香りが、手に取って操作する展示品と合わせて、訪れた人々の感覚を刺激する体験型空間

    展示台・タブレットスタンドなどの什器も、本体と同じ材料・手法で作成。
    内部に満ちる木の香りが、手に取って操作する展示品と合わせて、訪れた人々の感覚を刺激する体験型空間

  • 軽量な小断面製材で軸材ユニットを構成し、金物を使わずに差し込むだけで接合。新接合法による木質空間は、製材断面の寸法により多様なデザイン展開が可能

    軽量な小断面製材で軸材ユニットを構成し、金物を使わずに差し込むだけで接合。
    新接合法による木質空間は、製材断面の寸法により多様なデザイン展開が可能

  • 通常の製材の1/2の重量で構成できるため、車両での搬入が困難な場所での施工も可能。あらかじめ工場で仮組みを行い、形状を決定した後、分解して人力で搬入

    通常の製材の1/2の重量で構成できるため、車両での搬入が困難な場所での施工も可能。
    あらかじめ工場で仮組みを行い、形状を決定した後、分解して人力で搬入

  • 施工と運搬が容易な接合法の特徴を生かし、会期後終了後は主要パーツ単位で分解した後に別施設へ移設、用途目的を変えてワークスペースとして活用

    施工と運搬が容易な接合法の特徴を生かし、会期後終了後は主要パーツ単位で分解した後に別施設へ移設、
    用途目的を変えてワークスペースとして活用

当社開発技術の木材の新接合法「T-WOOD SPACE Light」を活用した木質空間が、2022年度グッドデザイン賞とウッドデザイン賞2022ライフスタイルデザイン部門建築・空間分野を受賞しました。
グッドデザイン賞は公益財団法人日本産業デザイン振興会が主催する、総合的なデザインの推奨制度です。
デザインによって私たちの暮らしや社会をよりよくしていくための活動であり、1957年の開始以来、シンボルマークの「Gマーク」とともに広く親しまれてきました。
当賞は、製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、私たちを取りまくさまざまなものごとに贈られます。
かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価・顕彰しています。

GOOD DESIGN AWARD (g-mark.org):https://www.g-mark.org/

ウッドデザイン賞は、ウッドデザイン賞運営事務局(特定非営利活動法人 活木活木(いきいき)森ネットワーク、公益社団法人国土緑化推進機構、株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所)が主催しており、木の良さや価値を、デザインの力で再構築することを目的として、優れた建築・空間や製品、活動や仕組み、研究等を募集・評価し、表彰する顕彰制度です。
ライフスタイルデザイン部門は、木を活かして質の高いライフ&ワークスタイルを提案しているものが対象となっています。

ウッドデザイン賞|JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2022:https://www.wooddesign.jp/

木材の新接合法(T-WOOD SPACE Light)を活用した木質空間

※クリックすると拡大します

図01

概要

本計画は、木造建築の発展を目指し国立京都国際会館で開催された国際イベントに向けた空間デザインです。
革新を継承することで新たな伝統をつくってきた日本建築の技術的・意匠的歴史を背景に、新開発の木質部材接合法を用いた屋内空間を構築しました。
伝統と現代をつなぐ新しい木接合を、脱炭素社会の実現に資する「新たな伝統」として実証・公開することを目的としています。

デザインのポイント

  • 日本建築を形作ってきた革新の継承を空間デザインに体現することで、現代とつながる新たな伝統をつくる
  • 未来へ受け継ぐことで新たな伝統となり得る、革新をもたらす木質部材接合法の実証と現物の提示
  • 建築物の木質化を推進する技術を利活用したデザインの展開により、脱炭素社会の実現に寄与

背景

近年の建設業界では、脱炭素社会の実現に向けた取組みとして、二酸化炭素を吸収して貯蔵する木質材料の利用を推進しており、建築物の木造化や内装の木質化など、意匠的・構造的性能の向上と同時に、より一層の木材利用が求められています。
これらのニーズに応えるため、屋内に木材のみを使用した空間を構築する技術として、運搬、施工が容易で、優れた構造性能を有する木質材料の新接合法を開発しました。
金物を使わずに差し込むだけで接合する、伝統的な木造構法にもつながる技術です。

経緯とその成果

本計画のデザインには、伝統と現代をつなぎ京都らしさを体現するモチーフとして、組子、格子、斗栱など、伝統建築に見られる木組みの意匠を取り込んでいます。また、水平と垂直の接合のみを用いる新接合法の構成に、経糸と緯糸で意匠を紡ぐ西陣織との共通点を見出しました。西陣で使われているジャカード織機は1872年(明治5年)にフランスから導入され、さらに高度な織物の生産を可能としています。日本の伝統と先進の技術をつなぎ新たな伝統をつくることが、本計画のテーマと通じていると考えました。
空間を形作る材料としては、地域産材活用の事例とすべく、県産杉材を全面的に使用しました。展示台・モニタスタンドなどの什器も、本体と同じ素材・手法で作成しています。木の香りや手に取って操作する展示品と合わせて、訪れた人々の感覚を刺激する体験型の木質空間となりました。
施工と運搬が容易な接合法の特徴を活かし、会期後は主要パーツ単位で分解した後に別施設へ移設し、半屋外のワークスペースとして活用しています。

図02

建築の木質化に寄与する新接合法

本計画に採用した新しい接合法は、軽量な小断面製材で軸材ユニットを構成し、金物を使わずに差し込むだけで接合します。梁や柱となる木質フレームを構築する軸材ユニットは、一般的な製材の1/9程度(重さは1/2)の小断面製材を綴り材で接合して構成しています。そのため人力による運搬・施工を容易に行うことができ、これまで困難であった、搬送・揚重機械を使用できない屋内での大規模な木質化が可能となりました。軸材ユニットは一般流通材で構成するため、特殊な加工機を必要とせず、全国の製材所で安価に調達できることも特徴です。

建物概要

<公開時>

  • 建築主
    大成建設株式会社
    所在地
    京都市左京区宝ヶ池
    用途
    建築物内展示空間
    構造
    木材の新接合法による木質フレーム構造
    使用樹種
    奈良県産杉材
    仕上げ
    素地仕上げ
  • 階数
    地上1階
    最高高さ
    2.7m
    面積
    9.0m2
    工期
    2021年10月(1日間)
    設計
    大成建設株式会社一級建築士事務所
    施工
    株式会社山本木材工業

<移設時(記載なき場合は公開時と同様)>

  • 所在地
    横浜市戸塚区名瀬町
    用途
    半屋外ワークスペース
    仕上げ
    含侵系木材保護塗料
    工期
    2021年11月(1日間)
    構造
    木材の新接合法による木質フレーム構造
FEATURE:
大成建設の木造・木質建築 > T-WOOD SPACE Series

大成建設担当者

  • 山﨑信宏
    建築設計
    山﨑信宏
  • 木村吉邦
    建築設計
    木村吉邦
  • 相馬智明
    構造設計
    相馬智明

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